2012年9月28日、抗菌薬のチゲサイクリン(商品名タイガシル点滴静注用50mg)が製造承認を取得した。適応菌は「本剤に感性の大腸菌、シトロバクター属、クレブシエラ属、エンテロバクター属、アシネトバクター属。ただし、他の抗菌薬に耐性を示した株菌に限る」で、適応症は「深在性皮膚感染症、慢性膿皮症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染、腹膜炎、腹腔内膿瘍、胆嚢炎」、用法・用量は「成人、初回100mg、以後12時間毎に50mgをそれぞれ30〜60分かけて点滴静注」となっている。

 近年、日本を含めて世界各地で多剤耐性アシネトバクター、特に多剤耐性アシネトバクター・バウマニ(multiple drug resistant Acinetobacter baumannii;MDR-AB)によるアウトブレイク事例(死亡例を含む)が報告されている。アシネトバクター属は、重症感染症を引き起こすことは他の細菌に比べて少ないものの、ひとたび発症すると重症化しやすいとされる。

 日本では、MDR-ABをはじめとした耐性グラム陰性菌による感染症に対して、治療薬の選択肢が欧米よりも少ない状況であり、臨床現場では大きな課題となっていた。そうした背景から2010年10月に、専門の4学会(日本感染症学会、日本化学療法学会、日本環境感染学会、日本臨床微生物学会)が「多剤耐性アシネトバクター感染症に関する四学会からの提言」を公表、欧米で使用されているチゲサイクリンの早期導入を要望していた。

 チゲサイクリンは、元々ミノサイクリン(商品名ミノマイシン他)に対する耐性機構を回避する目的で開発された、グリシルサイクリン系という新しい系統の抗菌薬であるが、その後、他の多剤耐性菌に対する有効性が確認されている。

 今回の承認に当たっては、国内臨床試験(第1相)及び海外臨床試験(第2/3相)で安全性と有効性が確認されている。海外では、2005年6月に米国で承認されて以降、2012年7月現在で世界95カ国で承認されている。

 承認までの海外臨床第3相試験では、52.9%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、悪心(26.4%)、嘔吐(18.1%)、下痢(11.9%)などであり、重大なものとしてはショック、アナフィラキシー様症状、重篤な肝障害、肝不全、血小板減少症、急性膵炎、偽膜性大腸炎、皮膚粘膜眼症候群が報告されている。

■参考サイト(日本感染症学会)
多剤耐性アシネトバクター感染症に関する四学会からの提言