2012年6月29日、前立腺癌治療薬デガレリクス酢酸塩(商品名ゴナックス皮下注用80mg、同皮下注用120mg)が製造承認を取得した。適応は「前立腺癌」で、用法・用量は「初回240mgを1カ所あたり120mgずつ腹部2カ所に皮下投与。2回目以降は、初回投与4週間後より80mgを維持量として、腹部1カ所に皮下投与し、4週間間隔で投与を繰り返す」となっている。

 世界的な前立腺癌の罹患率(年齢調整罹患率)は10万人あたり28.5であり、悪性腫瘍の中では肺癌に次いで2番目に多く、特に欧米などの先進国に罹患者が多いのが特徴である。前立腺癌の治療においては、年齢、ステージ、一般状態及び治療による日常生活の変化等を勘案して治療法が選択されるが、主なものには、(1)腫瘍マーカーであるPSA監視療法、(2)手術療法、(3)放射線療法、(4)薬物療法──がある。

 薬物療法では、抗アンドロゲン薬であるフルタミド(商品名オダイン)やビカルタミド(商品名カソデックス)などを使ったホルモン療法が広く行われている。しかし、ホルモン療法は、長期継続によって前立腺癌のホルモン依存性が消失し、去勢抵抗性となって臨床的に再燃する問題も指摘されている。

 今回承認されたデガレリクスは、GnRH(性腺刺激ホルモン放出ホルモン)アンタゴニストである。前立腺癌に適応をもつGnRHアンタゴニストは、本薬が日本初となる。GnRHアンタゴニストは、下垂体前葉のGnRH受容体と可逆的に結合することにより、下垂体からの黄体形成ホルモン(LH)の放出を抑制し、精巣からのテストステロン分泌を抑制する。その結果、アンドロゲン依存性の前立腺癌の増殖を抑制すると考えられている。

 なお、同じ前立腺癌に対して、GnRHアゴニストであるリュープロレリン(商品名リュープリン)やゴセレリン酢酸塩(商品名ゾラデックス)が使用される。GnRHアゴニストの場合は、GnRH受容体を持続的に刺激することで脱感作させ、結果的にGnRHの作用を抑制することを狙ったものであり、結果的に、精巣からのテストステロン分泌を抑制する点に関してはGnRHアンタゴニストも同じである。

 前立腺癌患者を対象としたデガレリクスの国内第2相臨床試験では、有効性と安全性の面で、リュープロレリンの海外第3相比較試験と類似性のあるデータが得られている。海外においては、これまでにデガレリクスは59カ国で承認されている。

 承認時までの国内臨床試験では、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が83.5%に認められている。主な副作用は、注射部位の疼痛(34.4%)・硬結(33.7%)・紅斑(32.2%)、ほてり(27.8%)などであり、重大な副作用としては、間質性肺炎(0.7%)、肝機能障害・糖尿病増悪(各0.4%)、心不全、血栓塞栓症が報告されている。