2012年5月30日、グルコシルセラミド合成酵素阻害薬ミグルスタット(商品名:ブレーザベスカプセル100mg)が発売された。本薬は、既に3月30日に製造承認を取得し、5月29日に薬価収載されている。適応は「ニーマン・ピック病C型」であり、用法・用量は「成人には1回200mgを1日3回、小児には体表面積に応じて用量を調節して経口投与する」となっている。

 ニーマン・ピック病C型は、主に小児期から10代で発病する、非常にまれで致死的かつ神経変性を伴う遺伝疾患である。通常は進行性で、ほとんどの患者は診断から5〜10年後に死亡する経緯をたどる。

 症状は、神経学的な異常が主で、ぎこちない体の動き、バランスの障害、ゆっくりとした不明瞭な会話、嚥下障害、眼の動きの障害及び麻痺などが出現する。一般に、末期は寝たきりとなり、ほとんど筋肉の制御ができず、知能障害が認められる。現時点で、本疾患の診断は難しく、その希少さや症状の非特異性により、診断までに数年を要することもあるといわれている。

 今回発売されたミグルスタットは、植物及び微生物から抽出されたポリヒドロキシ化アルカロイド(イミノ糖)に属する合成誘導体である。本薬は、スフィンゴ糖脂質の生合成経路において、グルコシルセラミド合成酵素を阻害し、グルコシルセラミドの生合成を抑制することから、関連するスフィンゴ糖脂質蓄積症(ゴーシェ病、ファブリ―病、GM2ガングリシドーシス、GM1ガングリオシドーシス)などの、いわゆるライソゾーム病の治療薬として開発されてきた。

 海外においては、酵素補充療法が有効でない、もしくは継続できない成人のゴーシェ病 I 型の治療薬として、2002年11月に欧州連合(EU)、2003年7月に米国で承認された。その後、動物実験において、ニーマン・ピック病C型での神経症状発現の遅延、生存期間の延長、小脳の細胞構造の維持、脳のガングリオシド蓄積の抑制といった効果が確認されたことで、2009年1月にEUで、ニーマン・ピック病C型患者による進行性神経症状の治療薬として承認された。

 日本でも、かねてから患者団体が早期承認を要望していたが、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」での検討を経て、2010年5月に、厚生労働省から製薬会社に開発要請が行われ、今回の発売に至っている。なお本薬は、2011年3月希少疾患病用医薬品に指定されている。

 国内臨床試験では、ほとんどの症例に下痢や腹痛などの胃腸障害が認められている。胃腸障害の軽減には、服薬タイミングの調節(食事から2時間以上空けて服用する)、服用量の調節(一時的な減量)、食事メニューの調節(炭水化物を減らす)といった工夫が有効と考えられている。