2012年5月29日、抗パーキンソン病薬のアポモルヒネ塩酸塩水和物(商品名アポカイン皮下注30mg)が薬価収載された。これに先立ち、3月30日には製造承認を取得している。適応は「パーキンソン病におけるオフ症状の改善(レボドパ含有製剤の頻回投与及び他の抗パーキンソン病薬の増量を行っても十分に効果が得られない場合)」であり、用法・用量は「発現時に1回1mgから開始し、経過を観察しながら1回量1mgずつ増量、維持量(1〜6mg)を定める。最高投与量は1回6mgまで」となっている。

 パーキンソン病は、「振戦」「筋固縮」「無動」「姿勢反射障害」の四症状を特徴とする錐体外路系の変性疾患である。これら臨床症状の改善には、ドパミン補充療法が有効であるが、ドパミン前駆物質のレボドパ(商品名ドパストン、ドパゾール)の他に、ドパミン受容体刺激薬も広く使用される。ドパミン受容体刺激薬は、カベルゴリン(商品名カバサール他)、ペルゴリドメシル酸塩(商品名ペルマックス他)などの「麦角系」と、プラミペキソール塩酸塩水和物(商品名ビ・シフロール、ミラペックス)、ロピニロール塩酸塩(商品名レキップ)などの「非麦角系」に分類される。これら薬剤の登場でパーキンソン病治療は飛躍的に進歩したが、一方で長期投与により症状の日内変動(on-off現象)が発現することが問題となっている。

 今回、薬価収載されたアポカインは、国内初の皮下注射製剤として開発された非麦角系のドパミン受容体刺激薬である。アポカインは、投与後20分でオフ症状を速やかに改善するとともに、投与後120分で効果が消失する、いわゆる「短時間作用型製剤」である。この特徴から、薬物療法中のパーキンソン病患者に出現したオフ症状に対するレスキュー薬として有用であると考えられている。具体的には、経口のパーキンソン病治療薬を服用中の患者で、オフ症状が出現した際に、次に服用する経口薬が効果を発揮するまでの間のオフ症状を一時的にアポカインで改善するという使い方である。

 海外においては、1993年に英国で承認されて以降、2011年までに米国など世界20カ国以上で臨床使用されている。日本では、2011年3月に希少疾患用医薬品の指定を受けている。

 承認時までの国内臨床試験では、副作用(臨床検査値異常を含む)が81.8%に認められている。主な副作用は、傾眠(21.2%)、悪心・好酸球数増加(各18.2%)、あくび(16.2%)などである。また重大な副作用として、突発的睡眠、傾眠、QT延長、失神、狭心症、血圧低下、起立性低血圧、幻視、幻覚、幻聴、妄想に注意が必要である。
 

■訂正 2012.6.4に以下の点を修正しました。
・3パラグラフ目に「アポカインは、(中略)非麦角系のドパミン受容体拮抗薬である」とありましたが、正しくは「非麦角系のドパミン受容体刺激薬」です。