2012年3月30日、高リン血症治療薬ビキサロマー(商品名キックリンカプセル250mg)が製造承認を取得した。適応は「透析中の慢性腎不全患者における高リン血症の改善」で、用法・用量は「1回500mgを開始用量として、1日3回食直前の投与。以後、血清リン濃度の程度により適宜増減するが、最高用量は1日7500mg」となっている。

 慢性腎不全患者では、腎臓からのリン排泄が低下することにより高リン血症を引き起こされ、カルシウム・リン積が上昇し、軟部組織にリン酸カルシウムが沈着して異所性石灰化が生じる。また、腎臓におけるビタミンDの活性化障害及びそれに伴う消化管からのカルシウム吸収の抑制により副甲状腺ホルモン(PTH)の分泌が亢進し、二次性副甲状腺機能亢進症(SHPT)も誘発される。SHPTでは、骨ミネラル代謝異常を生じ、骨病変、異所性石灰化、貧血の増悪、心筋障害などとの関連も示唆されている。日本透析医学会『透析患者における二次性副甲状腺機亢進症治療ガイドライン』では、血清リン濃度の管理目標値(3.5〜6.0mg/dL)を設定して治療を行うことを推奨している。

 高リン血症の治療は、慢性腎不全患者のQOL向上や生命予後の観点から、早急に治療を行うことが重要とされている。現在、慢性腎不全患者における高リン血症治療としては、沈降炭酸カルシウム(商品名カルタンほか)、炭酸ランタン水和物(商品名ホスレノールほか)、セベラマー塩酸塩(商品名レナジェル、フォスブロックほか)が臨床使用されている。

 今回、承認されたビキサロマーは、非吸収性のアミン機能性ポリマーである。陽性荷電状態のアミノ基を介するイオン結合及び水素結合により、消化管内でリン酸と結合し、体内へのリン吸収を阻害することで血清リン濃度を低下させる。

 同じ非吸収性ポリマーのセベラマーとの比較では、ビキサロマーが膨潤の程度が小さい特性があることから、消化管系の副作用が少ない(もしくは軽減される)こと、さらにはセベラマーで認められる過塩素血症性の代謝性アシドーシスの懸念がないことが期待されている。また、カルシウム製剤や炭酸ランタン水和物など、他のリン吸着剤との比較では、ビキサロマーはカルシウムや金属を含まないことから、高カルシウム血症や金属の組織沈着による毒性発現の懸念がないことが特徴である。

 承認時までの国内臨床試験では、副作用(臨床検査値異常を含む)が27.9%認められている。主な副作用は、便秘・便秘増悪(15.9%)、硬便(2.6%)、腹部不快感(1.8%)、腹部膨満(1.0%)で、重大な副作用としては虚血性腸炎、消化管出血、消化管潰瘍などが報告されている。なお、同じ非吸収性ポリマーのセベラマーで、死亡例を含む腸管穿孔、腸閉塞の事例が報告されていることから、ビキサロマーにおいても十分な注意が必要であり、ビキサロマーも腸閉塞の患者には投与禁忌となっているので留意したい。