2011年12月22日、抗悪性腫瘍薬のエベロリムス(商品名:アフィニトール錠5mg)に「膵神経内分泌腫瘍」の適応が追加された。本薬は、既に2010年4月から「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」の適応で臨床使用されている。また、同じエベロリムス製剤の低用量製剤(サーティカン錠0.25mg、同錠0.5mg、同錠0.75mg)が、2007年3月から免疫抑制薬として、「心移植時における拒絶反応の抑制」の適応で臨床使用されている。

 膵神経内分泌腫瘍pNET)は、消化器や呼吸器など様々な臓器における神経内分泌腫瘍(NET)のうち、膵臓を原発とするものの名称である。日本におけるNET全体の年間受療者数は約7000人であり、pNETの患者は約3000人弱と推測されている。発生頻度が低い、まれな腫瘍である。

 pNETの治療では、外科的切除が基本となるが、進行した状態で診断されると完全な切除ができず、それ以降の有効な治療法がないのが現状であった。

 エベロリムスは、日本で初の経口mTOR哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害薬である。マクロライド系免疫抑制薬として開発されたシロリムス誘導体であり、イムノフィリンであるFK506結合タンパク質-12と複合体を形成する。この複合体は、セリン/スレオニンキナーゼであるmTORに結合し、細胞増殖シグナルを阻害することにより、腫瘍細胞の増殖を抑制すると考えられている。さらに本薬は、血管新生を阻害することによっても腫瘍の増殖を抑制する。

 今回の適応追加により、エベロリムスは、pNETに適応を持つ日本で初めての薬剤となる。エベロリムスの国際共同第III相試験(RADIANT-3)では、進行性pNET患者を対象にプラセボ群及びベスト・サポーティブ・ケア(最適な支持療法)群と比較したところ、エベロリムス投与群における有効性と安全性が確認されている。

 本薬は、既に世界75カ国以上で承認されている。また欧米では、転移性腎細胞癌やpNETの適応に加え、結節性硬化症に伴って発生する「脳上衣下巨細胞性星細胞腫」(SEGA)の適応も承認されている。

 エベロリムスは、従来から間質性肺疾患(14.2%)などの重篤な副作用が認められているので、使用に当たっては十分な注意が必要である。事前の患者選択を十分に行うとともに、現時点では、全例が使用成績調査対象であることにも留意しておかなければならない。