2011年9月14日、抗悪性腫瘍薬のボリノスタット(商品名ゾリンザカプセル100mg)が発売された。本薬は、7月1日に製造承認を取得し、9月12日に薬価収載されている。適応は「皮膚T細胞性リンパ腫」であり、用法・用量は「1日1回400mg、食後投与」となっている。

 皮膚T細胞性リンパ腫(CTCL)は、悪性リンパ腫の中でも消化管や皮膚、脳など、リンパ節以外の臓器に発症することが多い非ホジキンリンパ腫の一種である。初診時に皮膚以外の臓器に病変を認めない原発性皮膚リンパ腫のうち、T細胞性リンパ腫を総称してこう呼ぶ。

 CTCLの大半を占める菌状息肉症では、「紅斑期」「扁平浸潤期」という緩慢に経過する時期を経て、多発性皮膚腫瘤を主体とする「腫瘍期」に至る。腫瘍期の患者では、臓器浸潤、感染症などを併発して極めて予後が悪く、死に至らないまでも、腫瘤の多発や再発などにより患者のQOLは著しく低下し、社会生活にも支障を来たすことが多い。

 ただしわが国では、諸外国に比べてCTCLの罹患患者数が少ない。日本におけるCTCL発生頻度は、欧米白人の10〜20%程度とも推定されている。そのため、新薬を開発するための臨床試験が難しく、これまで、欧米で汎用されている治療薬の導入が遅れていた。

 今回、発売されたボリノスタットは、2010年6月に厚生労働省より希少疾病用医薬品の指定を受けている。既存の抗悪性腫瘍薬とは異なる作用機序(ヒストン脱アセチル化酵素[HDAC]阻害)を有する経口製剤であり、「HDAC阻害薬」とも呼ばれている。詳細な作用機序は解明されていないが、HDACを阻害することでヒストン等のアセチル化が増加すると、クロマチン構造の弛緩を介して癌抑制遺伝子を含む遺伝子発現が増加し、分化やアポトーシスが誘導され、結果的に腫瘍増殖が抑制されるのではないかと推測されている。

 海外での後期第2相臨床試験(StageIIB以上の74例)では、CTCL全体での奏功率は29.5%であった。ボリノスタットは、2006年に米国で初めて承認されて以降、2011年5月現在、カナダ、オーストラリアなど世界20カ国で承認されている。

 薬剤使用に際しては、海外での臨床試験で93.0%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められていることに十分注意する必要がある。主な副作用は、下痢(46.5%)、疲労(45.3%)、悪心(38.4%)、食欲不振(34.9%)、血小板減少症(25.6%)、味覚異常(23.3%)などであり、重大な副作用としては、肺塞栓症、深部静脈血栓症、血小板減少症、貧血、脱水症状、高血糖、腎不全が報告されている。