2011年7月1日、MRSA感染症治療薬ダプトマイシン(商品名キュビシン静注用350mg)が製造承認を取得した。適応は、「ダプトマイシンに感性のMRSAによる感染症(敗血症、感染性心内膜炎、深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染)」であり、用法・用量は「1日1回6mg/kg(敗血症、感染性心内膜炎)、4mg/kg(深在性皮膚感染症、外傷・熱傷及び手術創等の二次感染、びらん・潰瘍の二次感染)を24時間ごとに30分かけて点滴静注」となっている。

 MRSAは、メチシリンをはじめとする多くの抗生物質に対して薬剤耐性を獲得し、医療施設内で接触感染などにより敗血症、感染性心内膜炎、皮膚軟部組織感染症などを引き起こして社会問題となっている代表的な耐性菌である。現在、病院内で検出される黄色ブドウ球菌の約半数がMRSAといわれている。MRSAに対する治療薬としては、バンコマイシン塩酸塩(VCM:商品名バンコマイシン塩酸塩など)、テイコプラニン(TEIC:商品名タゴシッドなど)、アルベカシン硫酸塩(ABK:商品名ハベカシンなど)、リネゾリド(LZD:ザイボックス)が使用されている。

 今回、承認されたダプトマイシンは、Streptomyces roseosporus株の発酵産物に由来する環状リポペプチドであり、MRSAにも有効である。グラム陽性球菌の細胞膜に結合し、細胞機能不全を引き起こして細胞を死滅させるという、他の抗菌薬とは異なる作用機序を有している。この機序は、既存の抗MRSA薬とも異なるため、リネゾリドなどに耐性を示すMRSAに対しても有効性が期待できる。

 ダプトマイシンは、1980〜1990年代に海外及び日本で開発されたものの、1回4mg/kg、1日2回の投与により骨格筋に対する有害事象が発現し、開発が中止された経緯がある。その後、用法を1日1回投与に変更し、有効性と安全性が確認された。海外では、2003年9月にアメリカで承認されて以降、2011年2月現在で世界71の国と地で承認されており、累計118万例以上の患者で有効性と安全性が確認されている。

 ダプトマイシンでは、重大な副作用としてショック、アナフィラキシー様症状、横紋筋融解症、好酸球性肺炎、末梢性ニューロパシー、腎不全、偽膜性大腸炎が報告されている。なお本薬は、皮膚・軟部組織感染症、敗血症、右心系感染症性心内膜炎に対して優れた臨床効果及び微生物学的効果を示すが、肺炎においては、セフェム系薬のセフトリアキソン(商品名ロセフィン他)よりも劣ることを把握しておかなければならない。