2011年4月22日、全身麻酔薬のデスフルラン(商品名スープレン吸入麻酔液)が製造承認を取得した。適応は「全身麻酔の維持」であり、用法・用量は「3%濃度で開始し、適切な麻酔深度が得られるように患者の全身状態を観察しながら、濃度を調節する。成人には、亜酸化窒素の併用有無にかかわらず、7.6%以下の濃度で外科的手術に適切な麻酔深度が得られる」となっている。

 現在、全身麻酔に使用されている薬剤としては、亜酸化窒素やイソフルラン(商品名フォーレンなど)などの吸入麻酔薬、プロポフォール(商品名ディプリバンなど)などの静脈性麻酔薬、レミフェンタニル(商品名アルチバ)などの麻薬性鎮痛薬、ロクロニウム(エスラックス静注)などの筋弛緩薬が使用されている。

 デスフルランは、イソフルランと同じ揮発性のハロゲン化吸入麻酔薬であり、イソフルランのα‐炭素に結合した塩素をフッ素で置換した化学構造を有している。血液への溶解度を示す血液/ガス分配係数が他のハロゲン化吸入麻酔薬に比べて最も小さく、速い麻酔作用の発現と麻酔後の早期覚醒・回復が期待でき、かつ麻酔深度が調整しやすいことが大きな特徴である。このことから、日帰り手術等にも有用であると期待されている。

 さらにデスフルランは、代謝産物による毒性リスクが低く抑えられており、腎臓及び肝臓でほとんど代謝されず、慢性肝疾患の患者や腎移植を受ける患者、生理機能が低下している高齢者などにも高い忍容性、安全性、有効性が示されている。一般外科手術を予定している日本人を対象とした国内臨床試験では、吸入麻酔薬として98.8%の有効性が確認されている。本薬は、1992年に米国で承認されて以降、2010年10月現在、世界67カ国で全身麻酔の導入及び維持に対して承認されている。

 使用に際しては、他の吸入麻酔薬を使用する場合と同様、禁忌患者などを事前に除外するとともに、副作用にも十分に注意する。承認時までの臨床試験では、何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が62.7%発現している。主な副作用は、悪心(27.2%)、嘔吐(14.2%)、ビリルビン上昇(12.4%)、血圧低下(9.5%)、γ-GTP増加(5.9%)、AST増加・心拍数減少(各4.7%)などであり、重大な副作用は、悪性高熱、高K血症、重篤な不整脈、横紋筋融解症、ショック、アナフィラキシー様症状、肝機能障害、黄疸が報告されている。

 なお、本薬は他の吸入麻酔薬と異なり、気道刺激性が強いことから麻酔導入には適用できない。また、臨床的に必要な濃度に気化させるために、電気的な加温が必要であり、必ず専用の気化器を使用しなければならない点に注意が必要である。