2011年4月22日、抗うつ薬エスシタロプラムシュウ酸塩(商品名レクサプロ錠10mg)が製造承認を取得した。適応症は「うつ病、うつ状態」で、用法・用量は「1日1回夕食後に10mgを経口投与で、1日最高用量は20mgを超えないこと」となっている。

 うつ病・うつ状態は、主にストレスなどによって引き起こされる代表的な精神疾患である。社会環境や個人を取り巻く環境が複雑になるにつれて、わが国でも罹患患者が年々増加傾向にある。その治療にも注目が集まっており、国内外で幾つかのガイドラインが公表されているとともに、治療も飛躍的に進歩している。

 うつ病の治療において中心的な役割を果たすのが薬物療法であり、近年、治療薬の開発が進んでいる。具体的には、パロキセチン(商品名パキシル)などの選択的セロトニン取り込み阻害薬SSRI)、ミルナシプラン(商品名トレドミン)などのセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)などが、うつ病治療における中心的薬剤となっている。

 今回承認されたエスシタロプラムシュウ酸塩は、SSRIに分類される抗うつ薬であり、フルボキサミンマレイン酸塩(商品名デプロメール、ルボックス)、パロキセチン塩酸塩水和物(商品名パキシル)、塩酸セルトラリン(商品名ジェイゾロフト)に次ぐ、4成分目のSSRIとなる。

 ラセミ体であるシタロプラム臭化水素酸塩(日本では発売されていない)の活性本体を光学分割したS-エナンチオマー製剤である。既存のSSRIと同様、選択的なセロトニン(5-HT)再取り込み阻害作用を示すほか、脳内での細胞外セロトニン濃度を持続的に上昇させることによりセロトニン神経系を賦活化し、抗うつ作用を発揮する。

 エスシタロプラムは、既存のSSRIに比べてセロトニン再取り込み阻害の選択性が高く、ノルアドレナリンやドパミンの再取り込み阻害作用が相対的に弱いものと考えられている。このことから、SSRIで見られる副作用のうち、ノルアドレナリンの再取り込み阻害に基づく低血圧、頻脈、振戦、睡眠障害などや、ドパミン再取り込み阻害に基づく鎮静、悪心、低血圧などが軽減できるのではないかと期待されている。海外では、2001年12月にスウェーデンで承認されて以降、2010年10月現在、世界90カ国以上で販売されている。

 承認時までの国内臨床試験(大うつ病性障害患者を対象とした4試験)では、74.4%に臨床検査値異常を含めた副作用が報告されている。主な副作用は、悪心(23.8%)、傾眠(23.5%)、頭痛(10.2%)などであり、重大な副作用としては、痙攣、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)、セロトニン症候群が報告されている。

 また既存のSSRIと同様に、併用によりセロトニン濃度が上昇する可能性があるモノアミン酸化酵素阻害薬(セレギリン塩酸塩[商品名エフピー])と、QT延長の可能性があるピモジド(商品名オーラップ)は、併用禁忌となっていることにも十分留意しておきたい。