2011年4月11日、乾燥細胞培養日本脳炎ワクチンの「エンセバック皮下注用」が発売された。本薬は既に1月17日に製造販売を取得している。用法・用量は「添付の注射用水0.7mLで溶解して、(1)初回免疫:0.5mL(3歳未満は0.25mL)ずつ2回、1〜4週間間隔で皮下投与、(2)追加免疫:初回免疫後おおむね1年経過した時期に0.5mL(3歳未満は0.25mL)を1回皮下投与」である。細胞培養法を用いた日本脳炎ワクチンとしては、2009年6月に発売された「ジェービックV」に次ぐ2製剤目となる。

 日本脳炎は、蚊(コガタアカイエカ)が媒体する日本脳炎ウイルスによって起こる感染症である。感染すると250人に1人程度発症するとされ、1〜2週間の潜伏期を経て、急激な発熱、頭痛を主訴として発症し、項部硬直、光線過敏、意識障害、筋硬直、不随意運動などの脳炎症状が発現する。

 日本脳炎には治療法がないため、ワクチン接種での予防が重要となる。従来から、予防の目的で日本脳炎ワクチン(北京株)が接種されてきたが、接種後に重症の急性散在性脳脊髄炎(ADEM)を発現した事例が報告された。その発症と、ワクチンの材料にマウスの脳を使っていることとの因果関係が否定できなかったことから、厚生労働省は2005年5月、このワクチンによる定期予防接種の積極的勧奨を行わないよう全国の市町村に勧告した。

 しかし専門家などは、最近でも日本脳炎の罹患患者がゼロではないことに鑑み、接種によるリスク(ADEM発症など)がより低い新しいワクチンを熱望。これを受けて、ジェービックVが開発・発売された。

 今回発売されたエンセバックは、ジェービックVと同様、ワクチン製造用として実績のあるVero細胞(アフリカミドリザル腎臓由来株化細胞)を材料とすることで、マウス脳由来物質によるADEM発症の理論的リスクを排除したワクチンである。また、保存剤のチメロサールを添加していない乾燥凍結製剤である点も特徴である。

 承認時までの臨床試験(対象は生後6カ月以上90カ月未満の小児)では、51.5%に何らかの副反応が認められている。主な副反応は、発熱(21.5%)、注射部位紅斑(16.6%)、咳嗽(8.0%)、注射部位腫脹・鼻漏(6.7%)、発疹(5.5%)などであった。また、重大な副反応として添付文書には、ショック、アナフィラキシー様症状、ADEM、脳症、けいれん、血小板減少性紫斑病が記載されている。

 なお本薬の使用でも、ADEMなどの発現を完全には除去できないことなどから、ジェービックVと同様、承認条件に「製造販売後、可及的速やかに重篤な副反応に関するデータを収集し、段階的に評価を行うとともに、その結果を踏まえ、本剤の適正使用に必要な措置を講ずること」が付されていることにも十分留意しておく必要がある。