2011年3月11日、癌性疼痛治療薬フェンタニルクエン酸塩の口腔粘膜吸収製剤(商品名アクレフ口腔粘膜吸収剤200μg、同400μg、同600μg、同800μg)が薬価収載された。本薬は、既に今年1月21日製造承認を取得している。適応は「強オピオイド鎮痛薬を定時投与中の癌患者における突出痛の鎮痛」である。

 本薬は、長さ10cmの手持ち部分に薬剤部分が取り付けられた形状で、薬剤部分を頬と歯茎の間に挟み、持ち手部分を前後左右に動かしたり回転させて薬を溶解させ、口腔粘膜から吸収させる。症状に応じて、800μgまでのいずれかの製剤を使用するが、効果不十分な場合には、15分以降に同一用量を1本追加できる。1回の突出痛には最大2本までとなっている。

 フェンタニルは、選択的μオピオイド受容体作動性のオピオイド鎮痛薬である。フェンタニルは、分子量が小さく脂溶性が高いため、皮膚からの吸収が良好であることから、早くから経皮吸収製剤が販売されている。マトリックス構造を有し、3日間有効な「デュロテップMTパッチ」に加え、2010年6月には、経皮薬物送達システム(Transdermal Drug Delivery system;TDDS)技術により1日24時間の安定した血中濃度が維持できるテープ製剤「フェントステープ」も発売され、広く臨床使用されている。

 癌性疼痛においては、オピオイド鎮痛薬の定時投与である程度はコントロールできても、一時的に増強する痛み(突出痛)がしばしば出現する。この突出痛を緩和するために、速放性のオピオイド製剤を使用した追加投与(レスキュードーズ)が必須となる。

 このレスキュードーズには、経口のモルヒネ製剤(商品名オプソ)やオキシコドン製剤(商品名オキノーム)が使用されてきたが、最近は、先述のフェンタニル貼付製剤が広く使用されるようになってきたことから、フェンタニルの速放性製剤の登場が待たれていた。

 今回、薬価収載されたフェンタニルの口腔粘膜吸収剤は、日本初となる速放性のフェンタニル製剤である。海外では、1998年11月に米国で承認されて以降、2010年3月現在、23カ国で承認されている。

 フェンタニルの口腔粘膜吸収製剤の登場で、癌性疼痛の突出痛に苦しむ患者のQOL向上に大きく貢献できるものと期待されている。ただし本薬は、経皮吸収製剤と同様に、肝薬物代謝酵素チトクロームP450(CYP)3A4で代謝されることから、この酵素に影響を与える薬剤を服用している患者では相互作用に注意する必要がある。また、承認時までに50.3%に何らかの副作用が認められている。主な副作用は、傾眠(11.7%)、便秘(9.8%)、口腔内出血(7.0%)、口内炎・嘔吐(各6.3%)などであり、重大な副作用としては、依存性、呼吸抑制、意識障害、ショック、アナフィラキシー様症状、痙攣などが認められている。