2011年3月11日に発生した東日本大震災の影響で、レボチロキシンナトリウム水和物(商品名チラーヂンS錠25、同S錠50、同S錠100、同S散0.01%)が一時的に供給不足となっている。今回は、レボチロキシンをはじめとする甲状腺ホルモン製剤について、その使用法などに関する情報をまとめてみる。

 甲状腺ホルモン製剤であるレボチロキシンの適応は、錠剤は「甲状腺機能低下症、粘液水腫、クレチン病、甲状腺腫」、散剤は「乳幼児甲状腺機能低下症」である。

 生物学的活性をもつ唯一のヨウ素化合物である甲状腺ホルモンには、主にチロキシン(T4)とトリヨードサイロニン(T3)があるが、これらは正常な成長と発育にとって不可欠であり、エネルギー代謝にも重要な役割を担っている。甲状腺で産生・分泌される甲状腺ホルモンは、多くがT4であるが、T4よりもT3の方が活性が高い。T4は、多くが肝臓や腎臓でT3に変換される。

 甲状腺の機能が損なわれ、甲状腺ホルモンの合成・分泌に障害が起こると、甲状腺機能低下症が起こる。治療では、甲状腺ホルモン製剤を用いたホルモン補充療法が行われる。

 甲状腺ホルモン製剤には、(1)動物の甲状腺全体を原料として調製された「乾燥甲状腺末」、(2)T3のL体である「リオチロニンナトリウム」(商品名チロナミン)、(3)T4のL体である「レボチロキシンナトリウム」──の3種類がある(下表)。

表●甲状腺ホルモン製剤の比較 クリックで拡大します。

 このうち、甲状腺機能低下症の第一選択薬として用いられてきたのが、現在、供給不足になっているレボチロキシンである。乾燥甲状腺末は、T3とT4の両方を含有するが、その比率が一定していないという問題がある。またT3製剤であるリオチロニンは、服用後の吸収が速やかで薬効も強いが、頻回の投与が必要であり、血中のT3濃度が一過性に正常値より大きく上昇する。そうした理由から、乾燥甲状腺末やリオチロニンは、甲状腺機能低下症での補充療法には積極的に使用はされていないのが現状である。

 表には、甲状腺ホルモン製剤における体内動態や大まかな換算の目安を示した。ただし、各製剤間の換算に関しては、各製剤の半減期、含有成分の相違があることから、「患者の臨床症状や既往歴(特に心疾患等の既往歴など)・臨床検査値等を考慮しながら慎重に行う」ことが求められている。

 なお、今回のレボチロキシンの供給不足に関しては、保団連(全国保険医団体連合会)をはじめとする各医療関係団体などから、行政当局に海外から緊急輸入を求める要望が出されており、それに応える形で、メーカー(あすか製薬)はウェブサイトで「製造委託会社による生産、海外製品の緊急輸入、被災工場の操業再開等のあらゆる方策により、供給再開が可能な見込み」と発表している(3月17日)。

 こうした動向をふまえ、われわれ医療関係者としては、現在の流通在庫を適正に使用するべく、当面は必要最小限の処方にとどめて、長期処方を控えるようにしたり、薬局では分割調剤を行うことを考慮したり、在庫も最小限に抑えて買い占めをしないなど、冷静に対処することが必要であろう。