2011年1月21日、直接トロンビン阻害薬のダビガトランエテキシラートメタンスルホン酸塩(商品名プラザキサカプセル75mg、同カプセル110mg)が製造承認を取得した。適応は「非弁膜症性心房細動患者における虚血性脳卒中及び全身性塞栓症の発症予防」で、1日2回、1回150mgの投与を基本とし、必要に応じて1回量を110mgに減量する。

 トロンビンは、血液の凝固に関わる酵素の一種で、血栓症及び止血における血栓形成に中心的な役割を果たしている。トロンビンの活性を阻害することで抗凝固作用を発揮する「抗トロンビン薬」としては、既にアルガトロバン水和物(商品名ノバスタン、スロンノン他)が使用されているが、本剤は脳血栓症などの急性期に使用する注射製剤であり、外来患者などが血栓塞栓症の予防に使用できる経口の抗トロンビン薬は存在していないかった。

 経口の抗凝固薬としてこれまで使用されてきたのは、ビタミンK依存性血液凝固因子の生合成を抑制するワルファリンである。しかし同薬は、有効性は高いものの、服用に際して様々な注意点があることが問題となっていた。具体的には、ビタミンK含有食品などの摂取制限があることのほか、ワルファリンに対する感受性に個人差が大きいため、投与開始直後はもちろん、投与中も頻回にPT-INR(プロトロンビン時間国際標準比)の定期的なモニタリングとそれに応じた用量調節を行う必要があった。

 今回、承認されたダビガトランエテキシラートは、消化管から吸収されると、エステラーゼで代謝されて、活性代謝物のダビガトランとなる、経口のプロドラッグ製剤である。ダビガトランは、トロンビン活性部位に競合的かつ可逆的に結合することで、トロンビンの触媒反応を阻害する直接トロンビン阻害作用を有している。

 ワルファリンを対照として行われた第3相国際共同試験では、ダビガトランの臨床有用性が示されている。海外では、2008年3月に欧州で「整形外科手術(人工股関節又は人工膝関節全置換術)施行患者における静脈血栓塞栓イベントの一次予防」の適応で承認され、現在までにカナダ、オーストラリアなど、78カ国で承認されている。また、日本と同じ適応では、2010年10月に米国で承認されている。

 今回承認されたダビガトランの登場により、適応症こそ限定はされるものの、血栓塞栓性疾患の発症予防に大いに貢献できるものと臨床現場では期待されている。ただし、日本人を含む第3相国際共同試験では、21.4%に副作用が認められているので、十分に注意が必要である。主な副作用は、消化不良(3.0%)、下痢・上部腹部痛・鼻出血・悪心(各1.1%)などであり、重大な副作用としては、出血(頭蓋内出血、消化管出血)が報告されている。