2011年1月11日、胃蠕動運動抑制薬のl-メントール(商品名ミンクリア内用散布液0.8%)が発売された。本薬は、既に2010年10月27日に製造承認を取得し、12月10日薬価収載されている。適応は「上部消化管内視鏡検査における胃蠕動運動の抑制」で、内視鏡検査時に、内視鏡鉗子口から胃幽門前庭部にいきわたるように散布する。

 上部消化管内視鏡検査では、消化管の過剰な蠕動運動が正確な検査の妨げになることから、従来から蠕動運動を抑制する目的でブチルスコポラミン臭化物(商品名ブスコパン)やグルカゴン(商品名グルカゴンGノボ)などの注射製剤が用いられてきた。

 しかし、これらの薬剤は、投与禁忌とされる患者が存在する。具体的には、ブチルスコポラミンでは、出血性大腸炎、緑内障、前立腺肥大による排尿障害患者などであり、グルカゴンでは褐色細胞腫及びその疑いのある患者が該当する。こうした患者には、やむを得ず、蠕動運動抑制薬を使用せずに内視鏡検査が行われていた。

 また一部施設では、ペパーミントオイルに消化管の蠕動運動を抑制する効果があるという知見に基づき、蠕動運動抑制薬を使用できない患者に院内製剤のペパーミントオイルを使用している例もあった。ただし、院内製剤だと、(1)主成分l-メントールの含量が一定しない、(2)溶液が白濁しているため検査に支障をきたす懸念がある、(3)時間が経つと水相と油相に分離するため、用時調整が必要──などの欠点も多かった。

 今回、発売されたミンクリアは、プレフィルドシリンジに充填されたl-メントール溶液であり、l-メントールを有効成分とする世界で初めての内用散布液である。臨床試験では、効果の見られた症例では、散布後、速やかに蠕動運動抑制効果が認められ、その効果は検査中持続したと報告されている。l-メントールは、投与局所で消化管平滑筋細胞のカルシウムチャネルを阻害することで、蠕動運動を抑制すると考えられている。

 臨床試験では、7.14%に副作用が認められている。主な副作用は、下痢、血中アミラーゼ増加(各1.70%)、白血球数増加(1.02%)、上室性期外収縮、心室性期外収縮(各0.68%)であった。

 なお、製剤がプレフィルドシリンジであることから、誤って注射されることがないように、シリンジ先端を注射針あるいは注射ラインに嵌合しない形状となっており、押し子の色も緑色となっている。さらに、ラベルにも「胃内視鏡用」「禁注射」と目立つように表示され、事故防止の措置がなされている。