2010年12月10日、抗悪性腫瘍薬のベンダムスチン塩酸塩(商品名:トレアキシン点滴静注用100mg)が薬価収載された。本薬は、既に10月27日に製造承認を取得している。適応は「再発又は難冶性の低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫ならびにマントル細胞リンパ腫」であり、用法・用量は「1日1回120mg/m2を1時間かけて点滴静注する。投与は2日間連日行い、19日間休薬するのを1コースとして投与を繰り返す」となっている。

 悪性リンパ腫には、ホジキンリンパ腫と非ホジキンリンパ腫があるが、日本では悪性リンパ腫の9割が非ホジキンリンパ腫であり、さらに、その6割がB細胞性非ホジキンリンパ腫であるといわれている。この非ホジキンリンパ腫は、進行のスピードによって、低悪性度(年単位で進行)、中悪性度(月単位で進行)、高悪性度(週単位で進行)に分類されるが、今回のベンダムスチンが適応とするのは、細胞分裂が盛んでないため、化学療法が奏功しにくいとされてきた「低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫」である。

 また、本剤のもう一つの適応である「マントル細胞リンパ腫」も、B細胞性非ホジキンリンパ腫の一種である。2〜3%程度の比較的頻度の低い病型だが、悪性リンパ腫の中で最も難治性が高いものの一つと考えられている。

 これら難治性の悪性リンパ腫に対する治療では、リツキシマブ(商品名:リツキサン)とCHOP療法(シクロフォスファミド、ドキソルビシン、ビンクリスチン、プレドニゾロンの併用療法)を併用する、いわゆる「R-CHOP療法」が主に用いられており、加えて、2002年に発売された注射剤のクラドリビン(商品名:ロイスタチン)や、2005年に発売された経口剤のフルダラビンリン酸エステル(商品名:フルダラ)なども使用されている。

 ベンダムスチンは、アルキル化剤が有するナイトロジェンマスタード化学構造と、代謝拮抗剤のプリンアナログ様化学構造を併せ持つ新規DNA作用剤である。p53依存性及び非依存性に、アポトーシスの誘導と有糸分裂期チェックポイントの抑制を行うことで、分裂期破壊を誘導して腫瘍細胞を傷害する。また、アルキル化剤との交叉耐性がない点も特徴である。

 海外の第3相臨床試験では、リツキシマブに対して治療抵抗性を示した低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫患者に対して、ベンダムスチンの奏功率は75%であったことが報告されている。海外では、2010年9月現在、低悪性度B細胞性非ホジキンリンパ腫を適応として、ドイツ、イギリス、フランス、米国、シンガポールなど13カ国で承認されている。また日本では現在、「再発又は難冶性の中高悪性度非ホジキンリンパ腫および未治療の多発性骨髄腫」を対象とした第2相臨床試験が進行中である。

 薬剤使用に当たっては、臨床試験において全症例に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められていることに十分な注意は必要である。重大な副作用としては、骨髄抑制、感染症、間質性肺炎、腫瘍崩壊症候群、重篤な皮膚症状、ショック・アナフィラキシー様反応が報告されている。