2010年9月22日、抗悪性腫瘍薬のテムシロリムス(商品名:トーリセル点滴静注液25mg)が発売された。本薬は7月23日に製造承認を取得し、9月17日に薬価収載されている。適応は「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」で、成人には、1週間に1回、25mgを30〜60分間かけて点滴静注する。

 腎細胞癌は、腎臓を原発とする腫瘍の85〜90%を占めており、経年的に増加傾向を示している。日本では、年間1万人以上が発症し、2007年の1年間だけで6764人が腎癌(腎盂癌を含む)で死亡している。

 近年、日本では、転移性腎細胞癌に対して分子標的薬が使用されている。まず利用可能になったのは、スニチニブ(商品名:スーテント)ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)といった血管内皮増殖因子(VEGF)阻害薬である。しかし、これらVEGF阻害薬に治療抵抗性を認める患者に対しては、有効な治療法が確立されていなかった。

 その後、今年になり、新たな作用機序を持つ分子標的薬として、mTOR哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害作用を有するエベロリムス(商品名:アフィニトール)が発売された。今回発売されたテムシロリムスは、このmTOR阻害作用を示す2番目の薬剤となるが、先行したエベロリムスが経口剤(錠剤)にあるのに対し、テムシロリムスは注射剤(点滴静注用剤)である。

 テムシロリムスは、エベロリムス同様、細胞の生存・成長・増殖を調節するmTORの活性を阻害し、細胞周期の進行及び血管新生を抑制することにより、腫瘍細胞の増殖を抑制する。薬物による前治療を受けていない予後不良の進行性腎細胞癌の患者を対象した海外第3相臨床試験では、全生存期間の中央値は、インターフェロンα単独投与群で7.3カ月だったのに対して、テムシロリムス25mg週1回単独投与群では10.9カ月と、有意な延長が認められている。

 海外では2007年5月に米国で承認され、現在、欧州を含む世界53カ国以上で承認されている。米国のNCCN(National Comprehensive Cancer Network)のガイドラインでは、腎細胞癌患者に対する薬物治療の一つとして推奨されている。

 海外での第3相臨床試験では、93.8%の何らかの副作用が認められている。主な副作用は、無力症(39.9%)、発疹(33.7%)、貧血(32.7%)、悪心(26.0%)、高脂血症(24.5%)、食欲不振(22.6%)、高コレステロール血症(20.7%)、口内炎(19.7%)、粘膜炎(18.3%)で、重大な副作用としては、間質性肺炎などが認められている。