2010年9月17日、癌疼痛治療薬のトラマドール塩酸塩(商品名:トラマールカプセル25mg、同カプセル50mg)が薬価収載と同時に発売された。適応は、「軽度から中等度の疼痛を伴う各種癌の疼痛」であり、用法・用量は「1日100〜300mg、4分割投与で1回100mg、1日400mgを超えないこと」とされている。トラマドールの注射剤(トラマール注100)は、既に1978年から販売されているが、経口剤としては今回のカプセル製剤が初めてとなる。

 「WHO方式がん疼痛治療法」では、痛みの強さにより鎮痛薬を選択する「3段階除痛ラダー」が提唱されている。第1段階の軽い痛みには、アスピリンなどの非ステロイド抗炎症薬(NSAIDs)などを使用し、第2段階の軽度から中等度の痛みには、弱オピオイド鎮痛薬のコデインに加えてNSAIDsを、第3段階の中等度から高度の痛みには、モルヒネ、オキシコドン、フェンタニルなどの強オピオイド鎮痛薬が使用される。トラマドールは、「軽度から中等度の疼痛」に適応があることからもわかるように、NSAIDsだけでは除痛が難しい第2段階の癌性疼痛に使用できる、非麻薬性の弱オピオイド鎮痛薬という位置付けとなる。

 トラマドールは、オピオイド受容体作動作用及びモノアミン増強作用(ノルアドレナリン再取込み阻害作用、セロトニン再取込み阻害作用)によって鎮痛作用を発揮する。モルヒネなどで問題になる便秘の副作用が少ないのが特徴で、モルヒネと同等の鎮痛効果を示す量を投与した場合、便秘が発現しなかった割合が、モルヒネ群の18.2%に対し、トラマドール群は39.1%だったと報告されている。

 このようにトラマドールは、有用な癌疼痛治療薬ではあったが、従来から使用されてきた注射剤は4〜5時間ごとの筋注が必要であり、患者に大きな負担を掛けることが問題となっていた。その点、今回発売されたトラマドーのカプセル製剤は、投与時の患者負担がないため、専門医から発売が要望されていた薬剤である。

 癌性疼痛を対象とした安全性評価試験では、67.8%に何らかの副作用が認められている。主な副作用は、便秘(30.0%)、悪心(29.2%)、嘔吐(19.5%)、傾眠(18.7%)、食欲不振・浮動性めまい(各8.6%)、頭痛(6.4%)などであり、重大な副作用としては、ショック、アナフィラキシー様症状、痙攣、依存性などが報告されている。