2010年9月10日、抗インフルエンザウイルス薬ラニナミビルオクタン酸エステル水和物(商品名:イナビル吸入粉末剤20mg)が製造承認を取得した。適応は、「A型又はB型インフルエンザウイルス感染症」であり、成人および10歳以上の小児は40mgを、10歳未満の小児は20mgを、単回吸入投与する。

 近年、インフルエンザウイルス感染症の治療では、オセルタミビルリン酸塩(商品名:タミフル)をはじめとするノイラミニダーゼ阻害薬が広く使用されている。ノイラミニダーゼ阻害薬は、インフルエンザウイルスのノイラミニダーゼを選択的に阻害することで、感染細胞内で新たに形成されたウイルスが細胞外に遊離するのを阻害し、ウイルスの増殖を抑制する。

 ノイラミニダーゼ阻害薬として、わが国では10年ほど前から、経口剤のオセルタミビルと、吸入剤のザナミビル水和物(リレンザ)が使用されてきたが、2010年1月に、単回点滴静注で効果を発揮するペラミビル水和物(ラピアクタ)が発売され、選択肢が広がっている。

 今回、承認されたラニナミビルは、この3剤に続く、4剤目のノイラミニダーゼ阻害薬である。吸入剤としては、ザナミビルに次ぐ2番目の製剤となる。同剤は、プロドラッグであり、吸入後に加水分解によって活性代謝物に変換される。この活性代謝物が長時間にわたり、ウイルスの増殖部位である気道や肺に貯留し、ウイルスの増殖を抑制するため、一度の吸入で治療が完結するのである。臨床試験では、オセルタミビルの5日間投与と同等の効果が確認されている。

 イナビルの1容器には、20mgのラニナミビルが2カ所に分かれて10mgずつ充填されている。容器の胴体部分をずらし、右にずれた状態と左にずれた状態で1回ずつ吸入する(吸い残しをなくすために、再度、左右で1回ずつ吸入することが推奨されている)。成人用量は1回40mgなので、1回に2容器分を使用する。つまり、治療自体は一度で完結するが、吸入回数で言えば、成人では4回(吸い残しをなくすための再吸入を含めると8回)の吸入を行うことになる。

 このように、イナビルの吸入操作は若干複雑であるが、一般には、吸入操作自体が、医師や薬剤師などの医療従事者の目の前で、十分な指導の下に行われるものと考えられ、患者の手技の巧拙による治療効果の差は出にくいと考えられる。また、一度の吸入で完結するため、服薬忘れや、患者の自己判断による服薬中止などを心配する必要がない。

 国内および海外(台湾、韓国、香港)での臨床試験においては、10.1%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められている。主な副作用は、下痢(4.7%)、悪心(0.8%)、ALT上昇(0.8%)、胃腸炎(0.7%)などであり、ほかに類薬での重大な副作用として、アナフィラキシー様症状、気管支攣縮、呼吸困難、皮膚粘膜眼症候群、中毒性表皮壊死融解症、多形紅斑等が報告されている。