2010年5月10日に、長時間作用型吸入気管支拡張薬であるチオトロピウム臭化物水和物のキット製剤「スピリーバ2.5μgレスピマット60吸入」が発売された。適応は、従来から使用されてきたカプセル製剤(商品名:スピリーバ吸入用カプセル18μg)と同じく、「慢性閉塞性肺疾患(慢性気管支炎、肺気腫)の気道閉塞性障害に基づく緒症状の緩解」である。成人では、1日1回、1回2吸入(5μg)を行う。

 慢性閉塞性肺疾患(COPD)は、喫煙習慣が主な原因となる肺の生活習慣病である。疾患は進行性で、息切れなどによって日常生活に支障をきたし、病状が進めば酸素吸入が必要になる。2005年時点で、世界中で2億1000万人が罹患しているとされ、日本でも500万人以上が罹患していると推定されている。

 COPDの治療に関しては、国内外でガイドラインが公表されており、日本でも2009年に『COPD(慢性閉塞性肺疾患)診断と治療のためのガイドライン第3版』(日本呼吸器学会)が公表された。COPDの薬物治療では、気管支喘息と同様に、気管支拡張薬が主役となるが、中でも1日1回の投与で気管支拡張作用が24時間持続する吸入用抗コリン薬のチオトロピウムは、治療ガイドラインにおいても、軽症から重症を含めた安定期のCOPDの管理における第一選択薬として推奨されている。

 今回、発売されたチオトロピウムのキット製剤であるレスピマットは、噴射ガスを使わずにチオトロピウム粒子の細かい霧を噴出する新しいソフトミスト吸入器であり、従来の専用吸入器(商品名:ハンディヘラー)を用いて吸入するカプセル剤と同等の治療効果を有することが国内臨床試験成績で確認されている。具体的には、従来の粉末吸入剤の約4分の1の投与量(5μg)で、有効成分であるチオトロピウムをより効率よく肺へ到達させることができる。海外では2010年1月現在、EUなど世界9カ国で発売されている。

 今回のキット製剤の発売により、COPD治療における患者の吸入時の利便性を高めることができると期待されている。ただし使用時には、従来のカプセル製剤と同様に、副作用発現には十分注意する必要がある。承認時までの国内での臨床試験では、主な副作用として口渇などが認められており、重大な副作用としては期外収縮が報告されている。