2010年4月16日、不眠症治療薬のラメルテオン(商品名:ロゼレム錠8mg)が承認を取得した。適応は「不眠症における入眠困難の改善」であり、用法・用量は「成人に1回8mgを就寝前に投与」となっている。

 睡眠は、睡眠不足を是正しようとする「恒常性維持機構(ホメオスタシス)」と、日常的に夜になると眠るという「体内時計機構」の2つの機構でコントロールされている。しかし、何らかの原因でこれらのコントロ−ルが崩れると不眠症に陥り、さらに症状が慢性化することで、うつ病などのリスクが高くなることが認められている。こうしたことから、不眠症は早期に治療する必要があるとされている。

 不眠症治療は現在、ベンゾジアゼピン系薬をはじめとする催眠剤を用いた薬物療法が中心となっている。ただし、ベンゾジアゼピン系薬は、鎮静・催眠作用以外に、抗不安作用、運動障害作用、筋弛緩作用、記憶障害なども有しているほか、長期的な使用による依存性や耐性なども問題となる。近年では、そうした副作用が少ない、ゾルピデム(商品名:マイスリー)などの非ベンゾジアゼピン系薬剤も登場し、使用頻度も増加している。

 今回、承認されたラメルテオンは、ヒトの視交叉上核に多数存在している脳の松果体のホルモンである「メラトニン」の受容体に選択的に結合して、薬理作用を発揮する薬剤である。メラトニン受容体には、催眠作用や睡眠リズムを調節する機能があるとされており、具体的に、その受容体であるM1受容体とM2受容体には、それぞれ次のような作用があると考えられている。

・M1受容体:刺激すると、神経発火を抑制したり、体温を低下させることなどにより睡眠を促す。

・M2受容体:刺激すると、体内時計を同調したり、概日リズム(サーカディアン・リズム)の位相を変動する。

 ラメルテオンの最大の特徴は、従来のベンゾジアゼピン系薬とは異なり、視交叉上核以外の脳内作用がないことであり、従来の睡眠薬に高頻度で発現していた反跳性不眠や退薬症候がなく、自然に近い生理的睡眠を誘導する。

 本薬は、日本で創薬された薬剤であるが、日本に先立って、2005年に米国で承認されている。わが国でもラメルテオンは、不眠症治療の新しい選択肢として、専門医などがかねてから承認・発売を期待していた薬剤であり、発売後は、広く使用されていくものと推測される。

 なお、使用に際しては、承認時までの臨床試験で、副作用(臨床検査値異常を含む)が10.4%に認められていることに注意が必要である。主な副作用は、傾眠(3.4%)、頭痛(1.0%)、倦怠感(0.5%)、浮動性めまい(0.5%)などであり、重大な副作用としてはアナフィラキシー様症状(蕁麻疹、血管浮腫等)が認められている。

【訂正】2010.5.6に以下を訂正しました。
・第3パラグラフで、ゾルピデムの商品名をアモバンとしていましたが、マイスリーの間違いでした。訂正いたします。