「ウブレチド錠5mg」添付文書(2010年3月改訂・第9版)より抜粋。

 2010年3月1日、コリンエステラーゼ阻害薬のジスチグミン臭化物(商品名:ウブレチド錠5mgほか)の添付文書が改訂された。具体的には、安全対策上の理由により用法・用量が変更され、「手術後及び神経因性膀胱などの低緊張性膀胱による排尿困難」に使用する際は、成人1日5mgのみとなった(従来は成人1日5〜20mg)。また、これに伴って「警告」が追加され、「使用上の注意」も改訂された。

 ジスチグミンは、可逆的かつ持続的なコリンエステラーゼ阻害作用を発揮する薬剤であり、排尿困難や重症筋無力症に有効な薬剤として、日本では1968年から臨床で広く使用されている。しかし、その有用性の一方で、特に、排尿困難の治療で用いた場合に、死に至ることのある重篤な副作用「コリン作動性クリーゼ」(呼吸困難を伴い、人工呼吸を要するような、アセチルコリン過剰状態の急性悪化状態)の発現が認められていることが問題となっていた。

 今回の添付文書改訂は、ジスチグミン治療におけるコリン作動性副作用の報告例(2004年4月〜2009年12月までの国内自発報告)と、再評価申請時の情報を、個別解析した結果に基づいて行われている。具体的には、1日投与量が多いほど、コリン作動性副作用の重篤症例(死亡例を含む)の推定発現率が高く、また1日5mg投与での死亡症例は認められていない。

 また、再評価申請時(1984年承認分)の情報を分析すると、排尿障害治療におけるジスチグミンの有効率は、「有効」以上62.7%、「やや有効」以上72%であったが、この中での5mg投与はそれぞれ60.3%、68.9%と、有効性に関してはほとんど差がないことが判明した。こうしたことから、安全性確保のため、排尿障害で使用する際の用量が1日5mg投与に限定されることになったのである。

 今回の用量制限により、ジスチグミンによるコリン作動性クリーゼの発現率が低下し、安全性が向上することが期待される。ただし、使用にあたっては、特に投与後2週間以内にコリン作動性クリーゼが発現しやすいことから、初期症状(悪心・嘔吐、腹痛、下痢、唾液分泌過多、気道分泌過多、発汗、徐脈、縮瞳、呼吸困難など)や血清コリンエステラーゼの低下などに十分注意する必要がある。