2010年1月20日、制吐薬パロノセトロン塩酸塩(商品名:アロキシ静注0.75mg)が製造承認を取得した。適応は「抗悪性腫瘍剤(シスプラチン等)投与に伴う消化器症状(悪心、嘔吐)(遅発期を含む)」であり、用法・用量は「1日1回、0.75mgを静脈投与」である。

 癌化学療法によって引き起こされる悪心・嘔吐は、患者の苦痛も強く、QOL低下が生じることから、治療を継続するにあたり、最も重要で解決しなければならない課題である。

 抗癌剤によって悪心・嘔吐が起こるメカニズムとしては、(1)化学物質受容体(CTZ)の活性化、(2)消化管粘膜からのセロトニン分泌促進による求心性迷走神経の活性化、(3)精神的素因などによる大脳皮質からの刺激経路──などが関与していると考えられている。また発現時期により、24時間以内に発現する「急性悪心・嘔吐」、24時間以降に発現する「遅発性悪心・嘔吐」、患者が癌化学療法を意識した際に発現する「予測性悪心・嘔吐」の三つに大別される。

 これまで、この癌化学療法による悪心・嘔吐に対しては、セロトニン(5-HT3)受容体拮抗薬を中心に、ステロイド薬、抗不安薬などが使用されてきた。これらの薬剤を使用することにより、急性悪心・嘔吐に関しては有効性が認められているが、その後に発現する遅延性悪心・嘔吐に関しては、有効性が確立していないのが現状であった。

 今回承認されたパロノセトロンは、グラニセトロン塩酸塩(商品名:カイトリル)などと同じ「5-HT3受容体拮抗型制吐薬」であるが、従来の薬剤と異なり、血中半減期が約40時間と非常に長く、しかも5-HT3受容体に対して高い親和性と選択性を有することから、24時間以降に発現する遅発性悪心・嘔吐にも有効性が認められている。このことは、グラニセトロンを対照薬とした国内第3相比較試験でも確認されている。

 本薬は、海外では、2003年7月に米国で承認されて以降、欧州連合(EU)、スイス、オーストラリアなど62カ国で承認されている。また、NCCN(National Comprehensive Cancer Network)の『制吐療法ガイドライン』では、高度催吐性悪性腫瘍剤に伴う悪心・嘔吐の予防薬としても位置づけられている。パロノセトロンは、遅発性悪心・嘔吐にも有効な5-HT3受容体拮抗型制吐薬として、今後、わが国でも使用頻度や使用量が多くなっていくことが予想される。

 使用に際しては、国内での臨床試験で、34.3%に何らかの副作用(臨床検査値異常を含む)が認められていることに十分な注意が必要である。主な副作用は、便秘(16.5%)、頭痛(3.9%)、血管痛(3.1%)であり、臨床検査値異常としてはALT上昇(5.4%)、QT延長(4.3%)、AST上昇(3.6%)、血中ビリルビン増加(2.3%)、γ-GTP上昇(2.1%)である。また、重篤な副作用として、アナフィラキシー様症状が認められている。