2010年1月20日、抗悪性腫瘍薬のエベロリムス(商品名:アフィニトール錠5mg)が製造承認を取得した。エベロリムス製剤は、既に低用量製剤(サーティカン錠0.25mg、同錠0.5mg、同錠0.75mg)が2007年3月から免疫抑制薬として発売されているが、低用量製剤の適応が「心移植時における拒絶反応の抑制」であるのに対し、今回、承認された製剤の適応は「根治切除不能又は転移性の腎細胞癌」である。用法・用量は、「成人1日1回10mgを空腹時投与」となっている。

 腎細胞癌は、腎臓を原発とする腫瘍の85〜90%を占めており、年々増加する傾向を示している。日本では、年間に1万人以上が発症しており、2007年の1年間では6764人が腎癌(腎盂癌を含む)で死亡している。

 これまで、日本では、転移性腎細胞癌に対しては、スニチニブ(商品名:スーテント)、ソラフェニブ(商品名:ネクサバール)など、分子標的薬である「VEGF(血管内皮増殖因子)阻害薬」が使用されてきた。しかし、VEGF阻害薬の投与後に治療抵抗性が認められる例もあり、そうした患者への有効な治療法が確立されていないことが問題となっていた。そうした事情から、今回承認されたエベロリムスは、優先審査品目に指定されていた。

 本剤は、日本初の経口mTOR哺乳類ラパマイシン標的タンパク質)阻害薬である。マクロライド系免疫抑制薬として開発されたシロリムス誘導体であり、イムノフィリンであるFK506結合タンパク質-12と複合体を形成する。この複合体は、セリン/スレオニンキナーゼであるmTORに結合し、細胞増殖シグナルを阻害することにより、腫瘍細胞の増殖を抑制すると考えられている。さらに本薬は、血管新生を阻害することによっても腫瘍の増殖を抑制する。

 海外では、米国、EU(欧州連合)をはじめとして45カ国で承認されており、米国NCCNをはじめ、欧米の複数の腎細胞癌治療ガイドラインで、「スニチニブまたはソラフェニブ等のVEGF受容体チロシンキナーゼ阻害薬後のセカンドライン治療薬」として推奨されている。

 新しい作用機序を有するエベロリムスは、転移性腎細胞癌患者の治療に対する新たな治療選択肢として、今後、使用頻度・使用量が多くなっていくものと予想される。

 副作用については、承認時までに行われた日本人を含む第3相国際共同臨床試験において、89.1%に何らかの副作用が認められている。主な副作用としては、口内炎(口腔内潰瘍等を含む)(42.3%)、発疹(28.1%)、貧血(25.2%)、疲労(23.0%)、無力症(22.3%)、下痢(21.2%)などであった。また、重大な副作用として、エベロリムス投与との因果関係が否定できない間質性肺疾患(死亡例を含む)が確認されている。

 なお本薬は、全症例に市販後調査が行われるとともに、医療機関への緊急連絡先が記載された「治療確認シート」が外来患者に交付されるなど、薬剤の適正使用推進と患者への安全性確保に向けた厳格な運用が行われる予定である。