2010年1月20日、肝細胞癌治療薬のミリプラチン水和物(商品名:ミリプラ動注用70mg)が発売される予定である。本薬剤は、同日に発売される専用の懸濁用液(ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)に懸濁し、肝動脈内に挿入されたカテーテルから投与する。適応は「肝細胞癌におけるリピオドリゼーション」である。繰り返し投与する場合は、4週間以上の間隔をあけることとされている。

 肝細胞癌では、標準的治療法の一つとして、抗がん薬を油性造影剤(ヨード化ケシ油脂肪酸エチルエステル)に懸濁して肝動脈内投与する局所治療(リピオドリゼーション)が行われている。また、この油性造影剤を用いた肝動注用の肝細胞癌治療薬として、ジノスタチン スチマラマー(商品名:スマンクス)が2004年から使用されている。

 ミリプラチンは、ジノスタチンよりも油性造影剤に親和性が高く、長期間にわたって腫瘍局所に停滞するため、全身への薬剤曝露が少ないのが特徴である。ミリプラチンは、担体配位子に1,2−ジアミノシクロヘキサン(DACH)、脱離基としてミリスチン酸を配位した構造の脂溶性白金錯体である。ミリプラチンは、生体内において、脱離基が主に塩素イオンと置換された1,2−ジアミノシクロヘキサン白金(DPC)に変換される。これが、がん細胞内のDNA鎖と共有結合した白金−DNA架橋(アダクト)を形成し、アポトーシスを誘導することで抗悪性腫瘍効果を発揮する。

 臨床試験では、再発率が高い肝細胞癌において、初回治療での有効性に加え、肝切除等の他の治療後に再発した患者に対しても良好な抗腫瘍効果を示すことが認められた。本剤は、局所作用性であるため全身への影響が少なく、有効性が高い治療法として、肝細胞癌治療に広く使用されていくものと予測される。

 ただし臨床試験では、薬剤投与により全例に副作用が認められている。主なものは、発熱(94.7%)、CRP上昇(91.2%)、好酸球増多(80.5%)、NAG上昇(76.1%)などである。投与時は、患者の状態を十分に観察し、解熱薬の投与等、適切な処置を行う必要があることを十分に把握しておかなければならない。