2009年10月16日、抗うつ薬パロキセチン塩酸塩水和物(商品名:パキシル錠10mg、同20mg)に「社会不安障害の適応が追加された。用法は「1日1回夕食後」で、通常成人には1回20mgを経口投与する。1回10mgから開始して1週ごとに10mgずつ増量し、症状に応じて40mg/日を超えない範囲で適宜増減する。

 社会不安障害は、人前で自分に注目が集まるような状況に対し、強い不安や恐怖を感じる疾患で、自分が恥をかくのではないかという心配や自律神経症状(手足の震え、動悸、吐き気、赤面、尿意など)が現れる疾患である。

 SADの多くは20〜30歳代で発症し、適切な治療を行わないと、日常生活に大きな支障を来す。さらにSAD患者は、うつ病を合併しやすいことが明らかになっており、SAD罹患患者の約7割にうつ病が併発するとの報告もある。しかし、SADの患者本人は「性格や気持ちの問題」と考え、医療機関に受診することが少ない。実際、パロキセチンのSADに対する臨床試験に参加した患者のうち、約9割がSAD発症から3年以上が経過しており、治療を受けるまでに長い期間が経過していたことが判明している。

 パロキセチンは、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)である。日本においては、2000年11月に「うつ病・うつ状態」と「パニック障害」の適応で発売され、2006年1月に「強迫性障害」の適応が追加されている。同薬は、「社会不安障害」の適応を持つ薬剤として、既に世界100カ国以上で承認・使用されている。なお、同じSSRIのフルボキサミンマレイン酸塩(商品名:デプロメール、ルボックス)は「社会不安障害」の適応を有しているが、フルボキサミンが1日2回服用なのに対し、パロキセチンは1日1回の服用で済むことがメリットである。

 臨床試験では、68.5%に臨床検査値異常を含む副作用が報告されている。主なものは、傾眠(23.6%)、嘔気(18.8%)、めまい(13.1%)、頭痛(9.3%)、便秘(7.9%)などである。また24歳以下の患者においては、SSRIを含む抗うつ薬の投与により、自殺などのリスクが高まるとの報告もあることから、リスクとベネフィットを考慮して、投与を検討する必要がある。

※2008年、日本精神神経学会は、Social Anxiety Disorder(SAD)に対応する日本語の名称を、「社会不安障害」から「社交不安障害」に変更している。