2009年10月16日、ホスホジエステラーゼ5阻害薬のタダラフィル(商品名:アドシルカ錠20mg)が製造承認を取得した。適応は「肺動脈性肺高血圧症」で、1日1回、1回2錠(40mg)を投与する。

 肺高血圧症(pulmonary hypertension:PH)は、肺動脈圧の上昇を認める病態の総称で、(1)肺動脈性肺高血圧症、(2)左心性疾患に伴う肺高血圧症、(3)肺疾患や低酸素血症に伴う肺高血圧症、(4)慢性血栓性や塞栓性疾患に伴う肺高血圧症、(5)その他――の五つに大別される。このうち、肺動脈性肺高血圧症(pulmonary arterial hypertension:PAH)は、生命予後が極めて悪いことが知られており、日本の患者数は約6000人と推定されている。

 近年の研究で、PAHには、エンドセリン、プロスタサイクリン(PGI2)、ホスホジエステラーゼ5(PDE5)が強く関連していることが判明した。その後、エンドセリン受容体拮抗薬のボセンタン(商品名:トラクリア、2005年6月発売)とPGI2誘導体のベラプロストナトリウム(商品名:ベラサスLA、ケアロードLA、2007年12月発売)が、PAHに適応を取得し、治療に使用されている。

 一方、PDE5阻害薬については、PAHに適応を持つシルデナフィルクエン酸塩(商品名:レバチオ)が2008年4月に発売されており、今回承認されたアドシルカがPAHに適応を持つ2番目のPDE5阻害薬となる。なお、この2剤は、いずれも勃起不全(ED)治療薬として先に臨床使用されているが、ED治療に使用されるシルデナフィルは「バイアグラ」、タダラフィルは「シアリス」と、PAHの適応を持つ製剤とは商品名が異なるので注意したい。

 PDE5は、陰茎海綿体だけでなく、肺動脈平滑筋にも多く存在している。PDE5阻害薬は、このPDE5の活性を阻害することで、平滑筋弛緩作用をもつサイクリックGMPの分解を抑制し、結果として肺動脈圧および肺血管抵抗を低下させる。

 タダラフィルとシルデナフィルの最大の違いは、タダラフィルの平均消失半減期が17.5時間と長いことである。この特徴により、シルデナフィルは1日3回の投与が必要であるのに対し、タダラフィルは1日1回で有効である。タダラフィルのPAHに対する安全性と有効性については、欧州、米国、日本で第3相国際共同無作為化プラセボ対照二重盲検試験などで確認されている。海外では、2009年5月に米国で承認されている(欧州は承認審査中)。

 薬剤使用に際しては、タダラフィルを勃起不全に使用する場合と同様、硝酸薬や一酸化窒素(ニトログリセリン、亜硝酸アミル、硝酸イソソルビドなどのNO供与薬)との併用に注意を要する。併用により降圧効果が増強され、過度の血圧低下を来たす危険があるからである。

 副作用発現率は49.3%であり、主なものとして、頭痛(27.6%)、潮紅(6.2%)、浮動性めまい(5.3%)、筋痛(5.0%)などが報告されている。