2009年7月7日、関節リウマチ治療薬エンブレル(一般名:エタネルセプト)に「多関節に活動性を有する若年性特発性関節炎(既存治療で効果不十分な場合に限る)」の適応が追加された。これに伴い、従来からあった「皮下注用25mg」に加え、「皮下注用10mg」が新たに剤形追加された。

 若年性特発性関節炎JIA)は、16歳未満で発症する、関節を主病変とした原因不明の慢性炎症性疾患である。臨床所見は関節リウマチRA)と類似点が多い一方で、若年性特発性関節炎は弛張熱を主体とする全身症状を伴ない、重篤度が高いことが特徴である。日本における若年性特発性関節炎患者は約3000人ほどで、そのうち約30%が多関節型と推定されている。

 若年性特発性関節炎の治療には近年、世界的に、生物学的製剤が中心的に使用されるようになっている。日本でも、2008年4月にヒト化抗ヒトIL-6レセプターモノクローナル抗体であるトシリズマブ(商品名:アクテムラ)に適応が認められているが、海外ではほかにも、TNFα阻害製剤であるインフリキシマブ(商品名:レミケード)、アダリムマブ(商品名:ヒュミラ)、エタネルセプトなどが使用されてきた。

 今回、若年性特発性関節炎に適応を取得したエタネルセプトは、完全ヒト型可溶性TNFα/ILαレセプター製剤である。関節リウマチにおける炎症発生プロセスに重要な役割を果たしているTNFに結合することで、TNFを生物学的に不活化させるとともに、代表的なサイトカインであるIL-αにも結合し、炎症を抑制する。若年性特発性関節炎に対しても、同様の機序で関節症状を緩和するものと考えられている。

 今回の適応追加により、日本でも若年性特発性関節炎にエタネルセプトが使用可能になり、治療の選択肢が増えたことは、患者にとって朗報といえるだろう。ただし、エタネルセプトは関節リウマチの場合と同様、第1選択薬としては使用できず、既存治療で効果不十分な場合に限定されていることに注意が必要である。また、投与による重篤な感染症(日和見感染症など)、結核などの発症・顕在化・悪化などにも十分に注意し、患者にも指導する必要がある。

 さらに、若年性特発性関節炎では、全身症状に対する有効性と安全性が確立していないため、全身症状が安定し、多関節炎が主症状の患者のみに使用が可能となっている。なお、エタネルセプトのシリンジ製剤(商品名:エンブレル皮下注25mgシリンジ0.5mL)には、若年性特発性関節炎の適応がなく、関節リウマチのみの適応であることも理解しておきたい。