2009年8月末、厚生労働省が発刊した『医薬品・医療機器等安全性情報 No.260』に、「三環系、四環系抗うつ薬等と攻撃性について」が掲載され、改めて注意が喚起された。この三環系抗うつ薬および四環系抗うつ薬による「攻撃性」の発現に関しては、既に7月3日に厚労省が製薬会社に添付文書の改訂を指示し、各医薬品の添付文書も改訂済みであるが、『安全性情報』では、これまでの副作用症例などを含め、これまでの経緯が詳細に掲載されている。

 抗うつ薬による攻撃性等に関しては、まず、選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)とセロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬(SNRI)に関して、それぞれの医薬品の販売開始から今年3月末日までの副作用報告が調査された。具体的には、この期間の副作用報告のうち、ICH国際医薬品用語集(MedDRA)日本版にいう「敵意/攻撃性」等に該当するものを抽出した結果、傷害等の他害行為のあったもの(他害行為につながる可能性があったものを含む)が39件あることが判明。このうち4件については、「服薬との因果関係が否定できない」と評価された。

 これら副作用報告の多くで、躁うつ病、統合失調症患者のうつ症状、アルコール依存症、パーソナリティー障害といった状況が併存していたことから、厚労省は5月8日、製薬会社に対して添付文書を改訂するように指示し、「脳の器質的障害または統合失調症の素因のある患者」「衝動性が高い併存障害を有する患者」などが新たに慎重投与の対象となった。

「トリプタノール錠25、同50」の添付文書(2009年7月改訂・第13版)より。下線部が今回の改訂箇所。

 一方、今回の『安全性情報』による注意喚起は、SSRIやSNRI以外の抗うつ薬に関するものである。SSRIとSNRI以外の13成分の抗うつ薬(三環系抗うつ薬、四環系抗うつ薬、トラゾドン塩酸塩、スルピリド)についても、SSRIやSNRIと同様に、今年5月15日までの副作用報告を対象として調査が実施された。その結果、傷害等の他害行為のあったもの(他害行為につながる可能性があったものを含む)が13件あることが判明した。また、このうち3件については、「服薬との因果関係が否定できない」と評価された。

 これらの副作用報告例も、SSRIやSNRIの場合と同じく、多くが、躁うつ病患者や統合失調症患者のうつ症状等の依存障害を有する状況で抗うつ薬を処方されたことにより、興奮、攻撃性、易刺激性等の症状を呈していた。こうしたことから、これらの抗うつ薬でも添付文書の改訂が必要と判断され、厚労省は7月3日、製薬会社に対して添付文書を改訂するように指示した。ただし、13成分中、スルピリドについては、副作用報告はあるが、併用されたSSRIによる影響が大きいと判断され、今回の添付文書改訂の対象とはなっていない。

 結果的に、この数カ月で、ほとんどすべての抗うつ薬に対し、攻撃性等の副作用に対する注意喚起が行われたことになる。既に抗うつ薬が投与されている患者や、これから投与される患者には、他害行為などの攻撃性に関する情報を含め、適切な情報提供が必要となろう。

 なお今年6月、日本うつ病学会の「抗うつ薬の適正使用に関する委員会」は、患者やその家族向けに『抗うつ薬の適切な使い方―うつ病患者様およびご家族へのメッセージ―』(pdfファイル)を発表している。患者指導の参考にしたい。