2009年8月7日、厚生労働省は医薬食品局安全対策課長通知で、経口禁煙補助薬のバレニクリン酒石酸塩(商品名:チャンピックス錠0.5mg、同錠1mg)の「使用上の注意」を改訂するよう製薬会社に指示した。これを受けて製造販売元のファイザーは、添付文書を改訂した。

 バレニクリンは2008年1月、「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙の補助」を適応として、日本初のニコチンを含まない経口禁煙補助薬として承認された。バレニクリンは、ニコチン依存症の形成に寄与しているα4β2ニコチン性アセチルコリン受容体に対して高い結合親和性を有しており、脳内に分布する同受容体に部分的アゴニストとして作用することにより、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する。また同時に、同受容体へのニコチンの結合を阻害することによって、喫煙による満足感を得にくくする。ほかの禁煙補助薬(ガムや貼付剤)に比べて、喫煙しながら禁煙できることが大きな特徴である。

写真1●「チャンピックス錠0.5mg、同錠1mg」の添付文書(2009年8月・第5版)の警告欄より

 今回の改訂では、添付文書に警告欄を新設して「抑うつ気分、不安、焦燥、興奮、行動又は思考の変化、精神障害、気分変動、攻撃的行動、敵意、自殺念慮及び自殺が報告されている」と記載した(写真1)。精神神経症状の発現と症状発現時の対処については、2008年1月から、米国の添付文書の「Warnings」の項目で注意喚起が行なわれてきたが、2009年7月には「Boxed Warnings」の項が設定され、注意喚起のレベルが強化された。

 この米国での措置と、国内で症例集積が進んだことを受け、国内の添付文書では、既に「重要な基本的注意」の項に記載されていた注意喚起を、新設した「警告」に移設して記載することになった。ただし、警告欄にも記載されてように、禁煙すること自体で精神疾患が悪化する場合があることも知られており、精神神経症状の出現がバレニクリンの投与と因果関係があるかどうかは明らかにはなっていない。

写真2●「チャンピックス錠0.5mg、同錠1mg」の添付文書(2009年8月・第5版)の重大な副作用欄より

 また今回の改訂では、重大な副作用の一つとして「皮膚粘膜眼症候群(Stevens-Johnson症候群)、多形紅斑、血管浮腫」が追加された(写真2)。こちらも、米国の添付文書との整合性をとるとともに、国内報告症例の集積を受けてのものである。

 今回の添付文書改訂を受けてわれわれは、バレニクリンを使用して禁煙治療を行うことで、因果関係は明らかでないものの、何らかの精神症状が起こる可能性があることを再認識する必要がある。また、ニコチン依存症の治療を行う患者には、これらの精神症状の発現の可能性があることや対処方法などについても指導し、しっかり理解させる必要があろう。