2009年7月7日、うつ病治療薬のミルタザピン(商品名:レメロン錠15mg、リフレックス錠15mg)が製造承認を取得した。「1日1回、1回1〜2錠を就寝前に服用」が標準的な用法・用量である。

 うつ病に関しては、国内外で複数の治療ガイドラインが公表され、使用されているが、いずれでも中心的な治療法として位置づけられているのは薬物療法である。うつ病の薬物療法に使用される抗うつ薬は、患者の増加もあって、次々と新しい薬剤が開発されており、そうした薬剤を使用することで治療成績も向上している。

 現在、うつ病治療で主に使用されているのは、パロキセチン(商品名:パキシル)をはじめとする「選択的セロトニン取り込み阻害薬」(SSRI)と、「セロトニン・ノルアドレナリン再取り込み阻害薬」(SNRI)のミルナシプラン(商品名:トレドミン)である。どちらも、従来の抗うつ薬に比べると安全性が高く、治療領域が広いのが特徴とされる。

 しかし、使用量が増えるにつれ、SSRIやSNRIでは、(1)作用発現までに時間がかかる、(2)セロトニン受容体刺激によると考えられる悪心・嘔吐、下痢などの副作用が見られる――といった問題点がクローズアップされるようになり、臨床の現場からは、こうした問題が少ないさらに新しい抗うつ薬の開発・承認が望まれていた。

 今回、承認されたミルタザピンは、SSRIやSNRIとは異なる、全く新しい作用機序を持った抗うつ薬である。その機序から「ノルアドレナリン・セロトニン作動性抗うつ薬」(NaSSA)と呼ばれている。

 作用機序としては、中枢神経のシナプス前α2-自己受容体とヘテロ受容体に対して阻害作用を示し、中枢神経のノルアドレナリンおよびセロトニン(5-HT)の神経伝達を増強する。また、セロトニン5-HT受容体のうち、5-HT2受容体と5-HT3受容体を阻害する作用があるため、抗うつ作用に関連する5-HT1受容体のみを選択的に活性化することができる。

 ミルタザピンは、1994年にオランダで発売されて以降、現在までに世界90カ国以上で発売されている。うつ病患者を対象としたミルタザビンの日本での臨床試験(プラセボ対照比較試験)では、投与1週目から有意に高い改善効果が示されており、長期投与試験では、52週まで抗うつ効果が維持されることが確認されている。こうした試験結果から、従来薬に比べて、効果発現までの時間が短く、持続的な効果が得られる抗うつ薬として期待されている。

 ただし国内の臨床試験で、82.7%に何らかの副作用が認められたことに留意する必要がある。高頻度に認められたのは、傾眠(50%)、口渇(20.6%)、倦怠感(15.2%)、便秘(12.7%)、アラニン・アミノトランスフェラーゼ増加(12.4%)などであり、重大な副作用としては、セロトニン症候群、無顆粒球症、好中球減少症、痙攣、肝機能障害、黄疸、抗利尿ホルモン不適合分泌症候群(SIADH)が報告されている。