2009年7月7日、免疫抑制薬のタクロリムス水和物(商品名:プログラフカプセル0.5mg、同カプセル1mg、同カプセル5mg)に「難冶性(ステロイド抵抗性、ステロイド依存性)の活動期潰瘍性大腸炎(中等症〜重症に限る)」の適応が追加された。投与時には、血中トラフ濃度モニタリングを行い、投与量を調節しながら使用することが定められている。

 潰瘍性大腸炎は、大腸粘膜にびらんや潰瘍ができる大腸の炎症性疾患であり、最も特徴的な臨床症状は、持続性または反復性の粘血・血便である。原因として、これまでに(1)感染(細菌、ウイルス等)説、(2)自己免疫説、(3)血管障害説――などの可能性が検討されているが、いまだに明確な病因は不明であり、特定疾患研究事業の対象疾患に指定されている。

 国内の患者数は10万人弱だが、近年は、年間5000人以上の患者数増加が認められている。好発年齢は20歳前後だが、小児や高齢者でも認められており、男女比はほぼ1:1である。

 潰瘍性大腸炎の薬物療法では、メサラジン(商品名:ペンタサ)やサラゾスルファピリジン(商品名:サラゾピリン)などが使用されるものの、標準治療ではステロイド製剤が使用されてきた。また最近は、ステロイド抵抗性の症例に、シクロスポリン製剤が適応外使用されることも増えていた。

 シクロスポリン同様、免疫抑制薬に分類されるタクロリムスは、1993年から、臓器移植における拒絶反応抑制の適応で承認・使用されており、その後、全身性重症筋無力症、関節リウマチ、ループス腎炎などの適応が追加された。現時点では、世界80カ国の国や地域で承認・販売されている。

 潰瘍性大腸炎に対してタクロリムスは、大腸粘膜における活性化T細胞からの種々の炎症性サイトカインの遊離を抑制するという作用機序で、大腸の炎症を抑え、症状を改善するとされる。

 なお、タクロリムス製剤には、顆粒剤、カプセル剤、注射液があるが、今回、潰瘍性大腸炎に適応が認められたのは、カプセル剤のみである。また2008年には、タクロリムスの1日1回投与の徐放性製剤(商品名:グラセプター)も承認されているが、こちらも現時点では、潰瘍性大腸炎への適応は認められていない。

 今回、タクロリムスのカプセル製剤の承認で、潰瘍性大腸炎に対する薬物療法の選択肢が増え、難治性患者への使用量が増えてくることが予測される。しかし、タクロリムスが承認された後も、潰瘍性大腸炎の標準治療薬はステロイド薬であることを念頭に置き、ステロイド抵抗性などの難治性のケースのみが適応であることを銘記したい。また、タクロリムスの副作用や臨床検査値異常(感染症、腎障害、高血糖、肝機能異常、高尿酸血症、高カリウム血症など)にも、従来通りの注意が必要である。