2009年6月19日、統合失調症治療薬クロザピン(商品名:クロザリル錠25mg、同錠100mg)が薬価収載され、近々発売が予定されている(製造承認は4月22日に取得)。適応は「治療抵抗性統合失調症」であり、用法・用量は「初日12.5mg、2日目は25mgを1日1回。3日目以降は症状に応じて1日25mgずつ増量し、原則3週間かけて1日200mgまで増量(1日50mgを超える場合には2〜3回分割)。ただし、1回の増量は4日以上の間隔をあけ、増量幅は1日100mgを超えないこととし、最高用量は1日600mgまで」となっている。

 クロザピンは、近年増加傾向にあるとされる治療抵抗性の統合失調症の最終選択薬として、2008年10月現在、世界97カ国で承認されている薬剤である。治療抵抗性の統合失調症とは、(1)数種類の抗精神病薬を十分量・期間投与したにもかかわらず、効果が得られない反応不良症例、(2)錐体外路症状などの副作用発現により治療に必要な用量まで投与できない耐忍性不良症例――のことである。

 一般に抗精神病薬は、古くから使用されているクロルプロマジン(商品名:ウインタミン、コントミンほか)やハロペリドール(商品名:セレネースほか)などの「定型抗精神病薬」と、近年登場したリスペリドン(商品名:リスパダール)、オランザピン(商品名:ジプレキサ)、クエチアピン(商品名:セロクエル)などの「非定型抗精神病薬」に分類される。クロザピンは、「非定型抗精神病薬」に分類されるベンゾジアゼピン系薬剤である。

 クロザピンの統合失調症に対する詳細な作用機序は不明だが、従来の薬剤とは違ってドパミンD2受容体に対する親和性が極めて低いことから、陽性症状に対する効果は、ドパミンD2受容体阻害によらない中脳辺縁系への選択的抑制作用によるものであり、陰性症状に対する効果は、前頭前野大脳皮質でのセロトニン5-HT2A受容体阻害による細胞外ドパミン濃度の上昇が関与しているのではないかと考えられている。

 クロザピンは、今後日本においても、既存の薬物治療に抵抗性を示す統合失調症例に高い有用性を示す薬剤として、専門医を中心に使用されていくものとと考えられる。

 ただし使用に当たっては、数多い重大な副作用に十分に注意しなければならない。添付文書に記載のある重大な副作用は、無顆粒球症、好中球減少症、白血球減少症、心筋炎、心筋症、心膜炎、心嚢液貯留、高血糖、糖尿病性ケトアシドーシス、糖尿病性昏睡、悪性症候群、てんかん発作、痙攣、ミオクローヌス発作、起立性低血圧、失神、循環虚脱、肺塞栓症、深部静脈血栓症、劇症肝炎、肝炎、胆汁うっ滞性黄疸、腸閉塞、麻痺性イレウスがある。

 中でも、無顆粒球症などの血球障害は重篤で、過去にこの副作用がきっかけとなって、一時的に世界中で販売停止または開発中止の措置がとられたとされる。これらの重大な副作用の発現を防止する意味から、クロザピンは、講習等を受けて「クロザリル患者モニタリングサービス」(CPMS)に登録された医師・薬剤師の下でしか使用できないこととされる。また、原則として、18週間の入院管理下で投与を開始することが定められている。