2009年4月22日、抗悪性腫瘍薬のドキソルビシン塩酸塩リポソーム製剤(商品名:ドキシル注20mg)に「がん化学療法後に増悪した卵巣癌」の適応が追加された。ドキシルは、「エイズ関連カポジ肉腫」の適応で、2007年2月に発売されている。

 卵巣癌は、自覚症状が乏しいことから早期発見が難しく、予後が不良な代表的な癌の一つである。あらゆる年齢で発症することもあり、罹患年齢のピークが50〜54歳と患者の年齢が比較的若く、患者数や死亡者数は増加傾向にある。

 卵巣癌は、化学療法で有効な薬剤が少なく、特に再発時には薬剤の選択に難渋することが少なくない。海外では、シスプラチン(商品名:ランダ、ブリプラチンほか)などの白金系抗悪性腫瘍薬が無効となった再発卵巣がんに対しては、ドキシルがの標準的治療薬として位置付けられていることから、日本でも早期の適応追加が要望されていた。

 ドキシルの有効成分であるドキソルビシン塩酸塩は、細胞の2本鎖DNAを架橋することによって、DNA合成とRNA合成を阻害し、さらにトポイソメラーゼII阻害作用により、DNA鎖を切断することで抗悪性腫瘍作用を発揮する。

 ドキシルは、このドキソルビシン塩酸塩を、水溶性の高分子ポリエチレングリコール(MPEG-DSPE)で修飾した脂肪二重層(リポソーム)に封入した薬剤である。リポソーム製剤とすることで、ドキソルビシンの腫瘍組織内滞留時間を延長させ、腫瘍組織内濃度を高めて有効性を向上させるとともに、血中の遊離ドキソルビシン濃度を抑えることで、骨髄抑制や脱毛や心毒性といった副作用を軽減することを目的としている。

 ドキシルは2008年10月現在、米国を含む約80カ国以上で発売されており、再発卵巣癌(ミューラー管を発生起源とした卵巣癌、腹膜癌を含む)に対する適応は、1999年に米国で初めて承認されて以降、約75カ国で承認されている。

 今回の適応追加により、海外で標準とされているドキシルの使用が可能になったことは、再発卵巣癌の患者にとって朗報といえるだろう。

 なお、使用に際しては、従来通り、副作用発現には十分な注意が必要である。また副作用発現時には、適応症、副作用の種類(手足症候群、口内炎、骨髄抑制、肝機能障害、その他)、重症度に応じて、減量や休薬などの方法が具体的に定められているので、それに従って対処することが必要となる。