2009年3月13日、経口抗悪性腫瘍薬のダサチニブ水和物(商品名:スプリセル錠20mg、同錠50mg)が薬価収載され、同日発売された(製造承認の取得は1月21日)。適応は、(1)イマチニブ(商品名:グリベック)抵抗性の慢性骨髄性白血病、(2)再発または難治性のフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病である。

 慢性骨髄性白血病(CML)およびフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病では、骨髄の造血幹細胞で第9染色体(ABL遺伝子)と第22染色体(BCR遺伝子)の相互転座が起こり、それによって生じたキメラ遺伝子(BCR-ABL遺伝子)が産生するBCR-ABLチロシンキナーゼが、発症や病態形成に深く関与していることが判明している。

 これらの治療には現在、BCR-ABLチロシンキナーゼを選択的に阻害するイマチニブが使用されている。わが国では05年に発売された本薬は、有効性が高く、従来から使用されているインターフェロンに比べて副作用も少ないことから、標準的治療薬として位置づけられている。しかし最近になって、イマチニブ耐性を示す症例も少なくなく、そうした患者においては治療の選択肢が限定され、予後も極めて不良であることが問題になってきた。

 今回承認されたダサニチブは、イマチニブと同様にチロシンキナーゼを阻害する薬剤であるが、BCR-ABLチロシンキナーゼだけでなく、発癌に関与する5種類のチロシンキナーゼ/キナーゼファミリー、すなわち「BCR-ABL」「SRCファミリーキナーゼ」「c-KIT」「EPH(エフリン)A2受容体」「PDGF(血小板由来増殖因子)β受容体」をターゲットとし、これらへのATP結合を競合的に阻害することで抗腫瘍効果を発揮する。

 このダサニチブは、イマチニブのみならず、ニロチニブ(商品名:タシグナ)に抵抗性を示す慢性骨髄性白血病にも、ある程度の有効性が認められている。ニロチニブは、ダサニチブと同時期に製造承認・発売となっており、BCR-ABL蛋白に対する選択性をイマチニブ以上に高めたチロシンキナーゼ阻害薬である。なお、ニロチニブの適応は「イマチニブ抵抗性の慢性期または移行期の慢性骨髄性白血病」に限定されており、フィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病には適応がない。

 ダサチニブは、海外では、06年6月に米国、06年11月に欧州連合(EU)で承認されて以降、08年12月時点で世界50カ国以上で承認されている。日本では07年3月に希少疾病用医薬品として指定されていた。

 今後、ダサニチブは、イマチニブ抵抗性の慢性骨髄性白血病やフィラデルフィア染色体陽性急性リンパ性白血病の治療において、有用な薬剤として位置づけられるものと予想される。ただし国内での臨床試験では、全症例で何らかの副作用が認められているので注意したい。重大な副作用としては、骨髄抑制、脳出血などの出血、胸水などの体液貯留、肺炎などの感染症、間質性肺疾患、腫瘍崩壊症候群、心電図QT延長、心不全、急性腎不全などが報告されている。