ベプリコール錠の添付文書(2008年10月・第12版)から。下線部が、効能・効果に関して今回改訂された部分。

 2008年10月16日、不整脈・狭心症治療薬のベプリジル塩酸塩水和物(商品名:ベプリコール錠50mg、同錠100mg)に「他の抗不整脈薬が使用できないか、又は無効の場合の持続性心房細動」の適応が追加された。

 ベプリジルは、日本では1993年から「他の抗不整脈薬が使用できないか、又は無効な場合の頻脈性不整脈(心室性)及び狭心症」に適応を持つ薬剤として、広く臨床現場で使用されてきた。海外では、1980年にフランスで抗狭心薬として承認されて以降、2008年3月現在、24カ国で承認されている。ただし抗不整脈薬として承認されているのは、日本のみである。

 ベプリジルは、心筋細胞のK、Ca2+、Naチャネルの遮断作用のほかに、Na/Ca2+交換機構の抑制作用を併せ持つことから、従来の心房細動治療薬とは異なる「マルチチャネル遮断薬」として位置付けられている。また、Ca2+−カルモジュリン系の酵素反応も阻害し、Vaughan Williams分類ではIV群に分類される抗不整脈薬である。

 今回、ベプリジルの適応として、新たに「持続性心房細動」が追加されたが、実際には、既に2003年に発行された『Sicilian Gambitに基づく抗不整脈薬選択のガイドライン』(日本循環器病学会)で、心房細動の薬理学的除細動や、その後の再発予防効果を示す重要な薬剤として位置付けられている。また多くの研究で心房細動に対する細動停止効果や再発予防効果が報告されていたこともあり、臨床現場では以前から適応外で使用されていたのが実情である。

 こうした背景もあって2004年4月、日本心電学会は、ベプリジルの上室性の頻脈性不整脈(心房細動)に対する適応外使用を是正するべく、適応追加の要望書を厚生労働省に提出した。その後、日本医師会治験促進センターで「日本人の持続性心房細動患者(観察期に7日以上の持続)」を対象とした医師主導治験が行われ、それらの臨床試験(J-BAF試験など)の成績などから、今回の適応追加となった。

 今後は心房細動の治療において、特にNaチャネル阻害薬(I群)の無効例・使用不可能例の洞調律維持に、ベプリジルがこれまで以上に広く使用されていくものと予想される。ただし、本剤の使用に当たっては、12週間以上の長期使用時の安全性など、十分なデータが得られていない部分があることにも留意しなければならない。また、これまでの臨床試験結果では、心室頻拍から死亡に至った症例(対象:持続性心房細動患者)、Torsades de pointes(対象:心房細動及び心房粗動患者)などが報告されていることから、投与中の過度のQT延長やTorsades de pointesの発現に十分な注意が必要である。