2008年10月16日、抗多発性骨髄腫薬のサリドマイド(商品名:サレドカプセル100mg)が製造承認を取得した。適応は「再発又は難治性の多発性骨髄腫」であり、用法・用量は「成人1日1回100mgを就寝前に経口投与し、1日400mgを超えないこと」となっている。

 血液癌の一つである「多発性骨髄腫」は、通常は骨髄に1%未満しか存在しない形質細胞(骨髄腫細胞)が癌化して骨髄内で増殖し、免疫能低下など来たす疾患である。原因は不明だが、遺伝的素因の関与が疑われている。高齢者に好発し、40歳未満の発症はまれである。症状は多彩で、造血抑制による貧血や白血球減少のほかに、M蛋白の増加による腎機能低下、破骨細胞の活性化による骨破壊(骨折や高カルシウム血症)などが起こる。

 治療では、末梢血幹細胞移植をはじめとした造血幹細胞移植のほか、化学療法としてドキソルビシン、メルファラン、シクロホスファミドなどの抗悪性腫瘍薬を組み合わせた多剤併用療法が行われてきた。さらに2006年には、多発性骨髄腫に適応を持つ10数年ぶりの新薬として、ボルテゾミブ(商品名:ベルケイド)が発売されている。

 今回、承認されたサリドマイドは、1957年に開発された睡眠鎮静薬であり、日本でも1958年から不眠症、手術前の鎮静、つわり止めなどに広く使用されていた。しかし1960年ごろ、サリドマイド内服が重度の先天異常や胎児の死亡を引き起こすことが世界各国で問題となり、販売中止となっていた。その後、サリドマイドには抗炎症・免疫調節作用、TNF-α産生抑制や血管新生抑制作用があることが判明。多発性骨髄腫に対する有効性が認められことから、1999年に米国で承認された。その後、オーストラリア、ニュージーランド、EU(欧州連合)などでも、多発性骨髄腫の治療薬として使用されるようになっている。

 これまで日本でも、その多発性骨髄腫に対する有効性を期待し、多くの施設で医師によるサリドマイドの個人輸入が行われており、日本の多発性骨髄腫患者約1万4000人のうち800人程度が、個人輸入されたサリドマイドでの治療を受けていると推定されている。

 今回承認を受けたことで、年内にもサリドマイドの国内での販売が始まるものと見られているが、使用に当たっては、製造販売元の藤本製薬がまとめた「サリドマイド製剤安全管理手順」(TERMS)を遵守しなければならない。具体的には、事前にMRからの説明を受けた上で、使用時には、患者、処方する医師、調剤に当たる責任薬剤師をメーカーに登録するなど、複雑な手続きが必要となるので注意したい。