2008年9月12日、生物由来の免疫抑制薬である抗ヒト胸腺細胞ウサギ免疫グロブリン(商品名:サイモグロブリン点滴静注用25mg)が薬価収載された。近く発売される予定である。適応は「(1)中等症以上の再生不良性貧血、(2)造血幹細胞移植の前治療(3)造血幹細胞移植後の急性移植片対宿主病急性GVHD)」である。

 現在、再生不良性貧血の治療に使用される免疫グロブリンとしては、抗ヒトTリンパ球ウサギ免疫グロブリン(商品名:ゼットブリン)、抗ヒト胸腺細胞ウマ免疫グロブリン(商品名:リンフォグロブリン)があり、いずれも「重症・中等症の再生不良性貧血」に適応を有している。今回、薬価収載されたサイモグロブリンは、リンフォグロブリンと同じ抗ヒト胸腺細胞グロブリン(ATG)製剤であるが、リンフォグロブリンがウマ由来であるのに対して、サイモグロブリンはウサギ由来のポリクローナル抗体(ウサギを免疫して得られた抗血清から分離精製した抗体)である。ウマ血清蛋白質に対してアナフィラキシー発現の危険がある患者に使用できる。

 さらにサイモグロブリンは、従来の免疫グロブリン製剤と異なり、「造血幹細胞移植の前治療」および「急性GVHD」に適応を有していることが大きな特徴である。造血幹細胞移植では、移植後にドナー骨髄中の末梢T細胞が移植患者の細胞を非自己と認識することで免疫学的反応が起こり、皮疹、黄疸、下痢などの症状が生じる。これが急性GVHDである。急性GVHDは、適切な治療が行われないと重篤な転帰をたどることがあるため、その予防を目的に「前治療」が行われる。

 この造血幹細胞移植に伴うGVHDの治療および予防に、抗ヒト胸腺細胞グロブリン製剤が有効であることは以前から知られていた。実際、2008年7月に公表された日本造血幹細胞移植学会の『造血幹細胞移植における急性GVHDの診断・予防・治療に関するガイドライン』でも、一般的な予防・治療薬として抗ヒト胸腺細胞グロブリン製剤の使用が推奨されているが、実際には、わが国には適応を持つ薬剤が存在しない状況だった。

 今回、サイモグロブリンが承認・薬価収載されたことで、急性GVHDに使用できる日本で初めての抗ヒト胸腺細胞グロブリン製剤が登場することになる。同剤は、海外では既に使用されており、1984年にフランスで承認されて以降、現在まで世界50カ国以上で発売されている。

 ただし、サイモグロブリンは、B型肝炎ウイルス感染のリスクを完全には排除できておらず、国内での治験成績等が極めて限られていることなどから、全例で調査を行うことが義務づけられているので使用時には注意したい。