2008年10月14日、加齢黄斑変性症治療薬のペガプタニブナトリウム(商品名:マクジェン硝子体内注射用キット0.3mg)が発売された。効能・効果は「中心窩下脈絡膜新生血管を伴う加齢黄斑変性症」であり、用法用量は「0.3mgを6週ごとに1回、硝子体内注入」である。

 加齢黄斑変性症(AMD)は、網膜の中心部にある黄斑が加齢などの原因で変性し、その結果、物がゆがんで見えたり、視野の中心が欠けて見えるなどの症状を起こす疾患である。AMDには、滲出型と萎縮型の2つのタイプがあるが、特に脈絡膜新生血管(CNV)を伴う滲出型AMDは進行が早く、適切な治療を行わなわないと急速に視力が低下し、失明する危険性が高い。

 AMDは現在、日本における高齢者の失明や視力低下の主要な原因疾患の一つとなっている。中でも滲出型AMD患者数は、わが国で急増しており、1987年には7500人だった患者数は、1993年には1万4400人となり、2008年には5万2000人にまで増えると推定されている。

 今回発売されたペガプタニブは、この滲出型AMDに有効な薬剤である。AMDの治療では、外科的治療やレーザー治療などが中心となるが、中心窩下脈絡膜に新生血管を伴う滲出型AMDでは、こうした治療が難しい場合が少なくない。近年、こうした病態には、ペガプタニブと同じ「中心窩下脈絡膜新生血管を伴うAMD」に適応を持つベルテポルフィリン(商品名:ビスダイン、2004年発売)を、レーザー光と組み合わせて行う「光線力学的療法」が行われるようになっている。

 ペガプタニブは、AMDにおける新生血管の成長や血液漏出を引き起こす血管内皮増殖因子(VEGF)の働きを抑えることで、視力の低下スピードを抑制する。実際には、VEGFの中でも、特に炎症誘導作用が強く、眼内における血管新生への関与が最も深いアイソマー「VEGF165」を選択的に阻害する。

 またペガプタニブは、日本初の「核酸医薬」としても注目されている。核酸医薬はDNAやRNAの構成成分である核酸からできた医薬品のことで、ペガプタニブは28塩基の1本鎖RNAである。核酸医薬は、その作用メカニズムによっていくつかのタイプがあるが、ペガプタニブは、蛋白質など核酸以外の物質にくっついて作用する「アプタマー医薬」に分類される。同様の目的で開発されている抗体医薬に比べて、自己免疫に排除されにくいことが特徴である。

 海外では、既に臨床使用が始まっており、その臨床効果が高い評価を受けている。2004年には米国で、2006年には欧州連合(EU)で承認され、2008年1月現在、世界53の国や地域で使用されている。日本では、2004年7月に希少疾病用医薬品に指定され、今回の発売に至っている。

 ペガプタニブの登場で、これまで難しかった「中心窩下脈絡膜新生血管を伴うAMD」の治療に、新しい有効な選択肢が加わることになる。ただし、ペガプタニブは、国内での治験症例が限られていることから、一定数の症例データが集積されるまでは、全症例を対象とした使用成績調査が義務づけられている。また国内外の臨床試験では、硝子体内投与による眼内炎などの重篤な副作用をはじめ、硝子体混濁など、様々な局所的な副作用が認められているので注意が必要である。