2008年7月16日、選択的抗トロンビン薬アルガトロバン水和物(商品名:ノバスタンHI注10mg/2mL、スロンノンHI注10mg/2mL)に「ヘパリン起因性血小板減少症HIT)II型における血栓症の発症抑制」が追加された。

 アルガトロバンは、日本で開発された選択的抗トロンビン薬である。トロンビンの作用を阻害することで、フィブリン生成阻害、血小板凝集抑制、血管収縮抑制などの作用を示す。既に「慢性動脈閉塞症における四肢潰瘍、安静時疼痛ならびに冷感の改善」「脳血栓症急性期に伴う神経症候、日常生活の改善」「先天性アンチトロンビンIII欠乏患者及びアンチトロンビンIII低下を伴う患者における血液体外循環時灌流血液の凝固防止(血液透析)」に適応を有しており、今回、これらにさらにもう一つの適応が追加されることになる。

 ヘパリン起因性血小板減少症(HIT)は、発生機序から非免疫学的に発生する「I型」と、ヘパリン依存性に自己抗体が出現する「II型」に分類されるが、今回、アルガトロバンに適応が追加されたのはII型である。HIT II型は、血栓の予防・治療のために投与されたヘパリンにより、免疫学的機序を介して血小板減少が引き起こされ、時にトロンビンの過剰産生に起因する致死的な血栓塞栓症(脳梗塞、心筋梗塞など)を併発する重篤な疾患である。海外の研究では、ヘパリン使用者の1〜3%がHITに至るともいわれており、特にヘパリンの使用頻度が高い透析の現場で問題になっている。

 HIT II型の発症時には、まずヘパリンの投与を中止し、ほかの抗凝固薬に切り替えることが重要である。さらに、HITの病状悪化を防ぐために、抗トロンビン薬の投与が有効であることが確認されているが、これまでは唯一の抗トロンビン薬であるアルガトロバンにHITの適応が認められていなかった。

 海外では、2000年に米国で「HITにおける血栓症の予防・治療」を適応に承認を取得して以降、海外10カ国で同じ適応が認められている。日本では、2005年4月から医師主導型治験(ARG-J試験)が実施され、HIT II型患者における薬剤の有効性と安全性が確認されたことで、今回の承認に至っている。

 適応を取得したことで、今後、アルガトロバンは、HIT II型における血栓症に対して広く使用されていくものと考えられる。ただし使用に当たっては、薬剤に起因すると考えられる出血性脳梗塞や脳出血などに十分に注意し、投与患者を慎重に選択したり、血液凝固能検査などで出血管理を行うことが必要である。