2008年7月16日、副交感神経興奮薬(商品名:アトワゴリバース静注シリンジ3mL、同6mL)が製造承認を取得した。本薬は、劇薬のネオスチグミンメチル硫酸塩と毒薬のアトロピン硫酸塩をあらかじめ2:1に配合したプレフィルドシリンジ製剤であり、製剤自体は劇薬に指定されている。適応は「非脱分極性筋弛緩薬の作用の拮抗」である。

 ネオスチグミン(コリンエステラーゼ阻害薬)とアトロピン(ムスカリン性アセチルコリン受容体遮断薬)は、手術中に残存する非脱分極性筋弛緩薬の作用を減弱し、患者の自発呼吸を速やかに回復させ、かつ副作用を抑えるために混合して使用される。具体的には、ネオスチグミンは非脱分極性筋弛緩薬の作用に拮抗し、アトロピンはネオスチグミン使用によるムスカリン作用を抑制する。

 『麻酔薬および麻酔関連薬使用ガイドライン』(日本麻酔科学会)など国内外のガイドラインでも、ネオスチグミンとアトロピンの2薬剤を2:1の割合で混和して使用する方法が、患者の脈拍数の変動が少ない投与方法として推奨されている。また、ネオスチグミンメチル硫酸塩(商品名:ワゴスチグミンほか)の適応にも、アトロピンとの併用による「非脱分極性筋弛緩薬の作用拮抗」が認められている。

 しかし、この2剤の混和調整時に小容量のアンプル製剤数本を混合する必要があり、この際、菌や異物が混入したり、混合ミスを起こすリスクがあることなどが指摘されていた。こうしたことから日本麻酔学会は、2005年に「医療過誤を防止する観点からネオスチグミンとアトロピンをあらかじめ混合した製剤が必要」とする要望書を厚生労働省に提出。これを受けて、メーカーは「医学・薬学上の公知」として今回の混合性剤の承認申請を行い、厚生労働省も混合製剤の有用性や安全性については、コンセンサスが得られ、かつ必要なものであるとして、新たな臨床試験は行われることなく今回の承認に至っている。

 本薬は、混合調製時の医療過誤の危険を回避できることから、今後、積極的に採用され、使用量も多くなっていくものと予想される。なお本薬は、既に臨床現場で多用されている薬剤同士を混合した製剤なので、未知の薬物相互作用や有害事象が生じる可能性は低いが、それぞれ単独でも劇薬・毒薬に指定されている薬剤であることを念頭に置き、投与に当たっては、これまでと同様の慎重さが必要であろう。