2008年6月13日、長時間作用型局所麻酔薬の塩酸レボブピバカイン(商品名:ポプスカイン0.25%注、同0.75%注)が薬価収載された。本薬剤は、4月16日に製造承認を取得しており、8月初旬に発売が予定されている。適応は「硬膜外麻酔(0.75%製剤のみ)、術後鎮痛(0.25%製剤のみ)」である。

 局所麻酔薬は、興奮性細胞膜の電位感受性ナトリウムチャネルに作用し、知覚神経及び運動神経刺激伝導ブロックして局所麻酔作用を発揮する。一般的に局所麻酔薬は全身麻酔薬と異なり、意識を失わせることなく効果が得られる麻酔薬であり、痛みを抑制して手術へのストレス反応を軽減し、また全ての侵襲に起因する疼痛を緩和することから、各診療科領域で広範囲にわたって使用されている。

 具体的に、局所麻酔薬としては、塩酸リドカイン(商品名:キシロカインほか)やメピバカイン塩酸塩(商品名:カルボカインほか)が多く使用されているほか、長時間作用型では、エステル型のテトラカイン塩酸塩(商品名:テトカインほか)や、アミド型のブピバカイン塩酸塩(商品名:マーカイン)が使用されている。

 この長時間作用型のうち、テトラカインは、アナフィラキシーやアレルギーの発現の危険性があることや、用時溶解することの煩雑さがあることから、ブピバカインに比べて使用頻度が低いのが現状である。一方のブピバカインは、血管内誤投与時や大量投与時における心毒性が強く、痙攣が発現する投与量と心停止が発現する投与量の差が少ないことが問題である。また、重篤な心血管系症状(心室性不整脈など)が生じた場合、長時間作用型であるがゆえに、蘇生が難しくなるという問題も指摘されている。

 今回、薬価収載されたレボブピバカインは、ブピバカインと同等の効力を持ちながら、心血管系や中枢神経系への副作用が少ないことが最大の特徴である。ブピバカインの心血管系および中枢神経系に対する作用には立体特異性があり、S(-)異性体であるレボブピバカインは、ラセミ体のブピバカインや、R(+)異性体よりも、心毒性及び中枢毒性が低いことが確認されている。海外では1998年にスウェーデンで承認されてから、現在までに米国およびEU(欧州連合)諸国を含む57カ国で承認されている。

 以上のような特徴から、今後、レボブピバカインは、長時間作用型の局所麻酔薬として、使用頻度・使用量ともに多くなることが予想される。ただし使用に当たっては、ブピバカインで危惧される不整脈誘発などの心血管系副作用や、痙攣発作誘発などの中枢神経系副作用の発現が、レボブピバカインでも皆無ではないことに十分注意しておく必要がある。