2008年6月13日に抗ヘルペスウイルス薬ファムシクロビル(商品名:ファムビル錠250mg)が薬価収載され、7月1日に発売される見込みである。適応は「帯状疱疹」で、用法・用量は「成人に1回500mgを1日3回投与」となっている。

 帯状疱疹は、水痘罹患後に神経節に潜伏感染していた水痘・帯状疱疹ウイルスが再活性化し発症する疾患である。臨床経過としては、前駆症状として神経痛様の疼痛や知覚異常が認められ、その後、疼痛部位に皮疹が帯状に出現する。皮膚症状は紅斑・丘疹で始まり、水疱、膿疱、びらん・潰瘍を経て、痂皮に至り、最終的には痂皮が脱落して、発症後2〜3週間で治癒する。この際、皮疹の治癒後も帯状疱疹後神経痛(PHN)として疼痛が長期間残存する場合が多いことが知られている。

 帯状疱疹の発症年齢をグラフ化すると、二峰性となり、20〜30歳代に小さなピークが、50〜60歳代で大きなピークが認められる。発症が高齢であればあるほど、疾患の重篤度が上昇するとされる。

 この帯状疱疹の治療薬としては、これまでアシクロビル(ACV、商品名:ゾビラックス)、バラシクロビル塩酸塩(VACV、商品名:バルトレックス)、ビダラビン(Ara-A、商品名:アラセナ)などの抗ヘルペスウイルス薬が使用されている。このうち経口剤は、アシクロビルとバラシクロビルが使用可能であるが、バラシクロビルは体内でアシクロビルに変換されるプロドラッグであり、抗ウイルス作用を示す有効成分はアシクロビル1種類しかない状況だった。

 今回登場したファムシクロビルも、体内吸収後に活性化されるプロドラッグ製剤ではあるが、その活性体は、従来のアシクロビルではなく、「ペンシクロビル」である。つまり、経口投与で抗ヘルペスウイルス効果を示す薬剤としては、活性成分という視点で見ると、アシクロビルに次ぐ2成分目ということになる。ファムシクロビルの活性代謝物であるペンシクロビルは、ヘルペスウイルス感染細胞内において特異的にリン酸化され、ペンシクロビル三リン酸となり、ウイルスのDNA合成を阻害することにより、ヘルペスウイルスの増殖を抑制する。

 ファムシクロビルは、海外では既に、英国や米国など約70カ国で承認されている。今後、わが国でも、帯状疱疹治療における選択肢の一つとして、広く使用されていくものと予想される。

 ただし、ファムシクロビルの適応は、従来のアシクロビルなどとは違って帯状疱疹のみであり、現時点では、単純疱疹などには適応がないことを承知しておきたい。また使用にあたっては、これまでの国内外の臨床試験結果などで、精神神経系障害(幻覚、錯乱、見当識障害など)の副作用発現が報告されていること、腎機能障害患者では血中濃度上昇の危険があること(投与された症例が少ないため詳細は不明)などに、十分な注意が必要である。