2008年1月25日、血液凝固阻止薬トロンボモデュリン アルファ(商品名:リコモジュリン点滴静注用12800)が製造承認を取得した。適応は「汎発性血管内血液凝固症DIC)」で、用法・用量は「成人に1日1回380 U/圓鯡30分かけて点滴静注」である。

 DICとは、血液凝固系の亢進により、全身の微小血管内に血栓が形成される症候群である。血栓による虚血で全身の臓器が障害されるとともに、血栓形成の過程で血小板や凝固因子が大量に消費され、著明な出血傾向が出現する。悪性腫瘍、感染症、産婦人科疾患などに合併しやすく、発症すると非常に予後が悪いことが知られている。

 DICでは、基礎疾患の治療が最優先ではあるが、DICそのものを改善するために、減少した血小板や凝固因子の補充や抗凝固療法が行われる。抗凝固療法では、ヘパリンナトリウム、低分子ヘパリン製剤のダルテパリンナトリウム(商品名:フラグミンほか)、プロテアーゼインヒビター製剤のメシル酸ナファモスタット(商品名:フサンほか)、アンチトロンビンIII製剤(商品名:ノイアートほか)などが使用される。しかし、これらの抗凝固療法では、出血傾向を増大させる危険性があることが問題となっている。

 今回承認されたトロンボモデュリン アルファは、天然のトロンボモデュリンと同様、血液凝固因子であるトロンビンと特異的に結合して凝固促進活性を低下させるとともに、凝固カスケードにネガティブフィードバックをかけて、トロンビンの産生を抑制する。また最近では、抗炎症作用を有することも報告されている。天然のトロンボモデュリンは、血管内皮細胞上に存在する難溶性の膜蛋白質であるが、遺伝子組み換え技術を使用して、その活性部位(細胞外部分)のみを可溶化型分子として精製したのが、トロンボモデュリン アルファである。

 今後、トロンボモデュリンは、DICの治療薬として広く使用されていくものと考えられる。ただし本薬は、臨床試験などで、DICの中でも「造血器悪性腫瘍あるいは感染症を基礎疾患とするDIC」に有効性が高いことが明らかになっている一方で、それ以外の疾患に起因するDICでは使用経験が少なく有効性や安全性が確立されていない。使用に当たっては、この点に留意する必要があるだろう。