2008年1月25日、ウィルソン病治療薬の酢酸亜鉛水和物(商品名:ノベルジンカプセル)が製造承認を取得した。適応は「ウィルソン病(肝レンズ核変性症)」である。

 ウィルソン病は先天性銅代謝異常症であり、銅が肝臓・腎臓・脳などに多量に蓄積することで、肝機能低下などの障害を引き起こす疾患である。3万〜4万人に1人と、先天性疾患としては比較的高頻度で発症する。発症年齢は5〜40歳と広いが、約7割は15歳以前に発症する。治療をしないと肝炎や肝硬変など重篤な症状が現れることから、早期に発見して治療を開始することが重要である。

 治療としては、銅を多く含む食品(貝・甲殻類、レバー、豆、穀類、ココア、チョコレートなど)の摂取を制限するとともに、D-ペニシラミン(商品名:メタルカプターゼ)や塩酸トリエンチン(商品名:メタライト)といったキレート薬で銅の排出を促進する。とはいえ、銅を含む食品は多いため、食事制限には限界がある。また、D-ペニシラミンにはビタミンB6に対する拮抗作用があるため、一般にはビタミンB6製剤(商品名:ピドキサールほか)と併用するが、それでも治療が長期にわたると副作用(神経症状の増悪など)等で服薬の継続が困難になる場合もある。

 今回、承認された酢酸亜鉛水和物は、体内で亜鉛になって効果を発揮する新しい薬剤である。具体的には、摂取した亜鉛が、腸管粘膜上皮細胞において金属キレート作用を有するメタロチオネイン(システインに富む蛋白質)の生成を誘導し、その増加したメタロチオネインが食事中の銅と結合する。腸管粘膜は日々脱落し糞便中に排泄されているため、腸管粘膜内でメタロチオネインと結合した銅も、そのまま排泄され、結果的に食事からの銅の吸収が抑制されるのである。

 酢酸亜鉛は、従来のキレート薬よりも比較的副作用が少ないことなどから、欧米では既にウィルソン病の第1選択薬として使用されている。日本でもかねてから患者団体が早期承認・使用を求めており、発売後は、酢酸亜鉛製剤がウィルソン病治療の中心的薬剤として使用されていくものと予想される。ただし、従来のキレート薬と併用する場合には、間隔を1時間以上空けなければならない。また妊婦では減量が必要なことなど、慎重な投与を必要とする場合もあるので、投与時には、副作用や相互作用を含めた使用上の注意をしっかりと確認しなければならない。