2008年1月25日、日本初となる経口禁煙補助薬バレニクリン酒石酸塩(商品名:チャンピックス錠0.5mg、同1mg)が製造承認を取得した。適応は、「ニコチン依存症の喫煙者に対する禁煙治療」である。これまでわが国の禁煙治療では、ニコチンを含有するガム製剤(OTC薬、商品名:ニコレット)と貼付剤(商品名:ニコチネルTTS)が、ニコチン代替療法における禁煙補助薬として使用されていたが、経口剤は存在しなかった。

 近年、喫煙習慣の本質がニコチン依存症であるという認識が高まっている。欧米諸国ではかねてから、ニコチン依存症を「再発しやすいが、繰り返し治療することにより完治しうる慢性疾患」と捉え、一部の国では禁煙治療に保険が適用されてきた。日本でも、ようやくニコチン依存症が新たな治療対象疾患として認知されるようになり、2006年の診療報酬改定で「ニコチン依存症管理料」が新設された。これにより、「禁煙治療のための標準手順書」(作成:日本循環器学会、日本肺癌学会、日本癌学会)に従って治療すれば、ニコチン製剤を用いた外来禁煙治療に保険を適用することが可能となった。

 ただしニコチン代替療法は、ニコチンによる血管拡張作用のため、副作用として頭痛やめまいなどを生じることがあるほか、不整脈や虚血性心疾患などの患者には使用できない。また貼付剤は、肌がかぶれやすいといった欠点も指摘されていた。

 今回、製造承認を取得したバレニクリンは、ニコチン性アセチルコリン受容体の部分作動薬である。ニコチン受容体は、ニコチンが結合するとドパミンが放出され、強い快感や報酬感をもたらす。これがニコチン依存の原因とされる。バレニクリンは、ニコチンに代わってニコチン受容体に結合することで、禁煙に伴う離脱症状やタバコに対する切望感を軽減する。またそれと同時に、ニコチンに先んじてニコチン受容体を占有することで、再喫煙した場合にも満足感が得られにくくなり、禁煙を持続しやすくなる効果が期待できる。

 バレニクリンは2006年6月に米国で、同年9月にEU(欧州連合)で禁煙治療薬として承認されて以降、2007年5月現在、アジアを含めて世界40カ国以上で承認されている。現在のところバレニクリンは、食事やほかのニコチン含有製剤の影響を受けず、またチトクロームP450を介した薬物相互作用も生じないことが示唆されており、比較的使いやすい薬剤だと考えられている。今後、バレニクリンは禁煙治療の中心的な薬剤として位置付けられるものと考えられる。

 なお国内外の臨床試験では、投与開始後早期に高い発現頻度で嘔吐が認められている。それによる投与中止例は少なかったことが報告されているが、ほかに不眠や便秘などの報告もあることから、投与予定患者には、事前にこれらの副作用等についてきちんと説明しておくことが必要であろう。