2007年12月26日、アルツハイマー型認知症治療薬の塩酸ドネペジル(商品名:アリセプト)に、10mgの普通錠および口腔内崩壊錠が発売された。これまでは「軽度および中等度アルツハイマー型認知症」の適応で、3mgおよび5mgの錠剤(1999年発売)と口腔内崩壊錠(D錠、2004年発売)、0.5%細粒(2001年発売)が使用されてきたが、2007年8月23日に「高度アルツハイマー型認知症」が追加承認されたことを受け、今回の10mg製剤が発売されることとなった。

 アルツハイマー病は、初老期や老年期に生ずる代表的な神経変性疾患である。具体的には、記銘力障害、失見当識で発症し、中期には失認、失行のため日常生活に支障を来す。妄想や徘徊などを伴うこともあり、患者家族など介護者への負担も大きい。ドネペジルは、このアルツハイマー病における認知機能障害(アルツハイマー型認知症)に対して、わが国で唯一適応を有している薬剤である。

 アルツハイマー型認知症では、脳内コリン作動性神経系の障害が認められる。ドネペジルは、選択的に脳内コリンエステラーゼを阻害することで脳内のアセチルコリン量を増加させ、その結果、脳内コリン作動性神経系を賦活する。またドネペジルは、血漿中濃度消失半減期が長く(単回投与時:約80時間)、1日1回投与で効果が発揮されるのが特徴である。

 同薬は、これまでは軽度および中等度のアルツハイマー型認知症にしか適応がなかったが、1日用量を増量(5mg→10mg)することで「高度」のアルツハイマー型認知症にも有効であり、安全性にも大きな問題がないことが確認され、適応が拡大された。高度アルツハイマー型認知症には、1日1回5mgで治療を開始し、4週間以上経過した後に10mgに増量することとされている。今回10mg錠が登場したことで、高度アルツハイマー型認知症の治療に用いる場合にも1日1錠の服用で済むことになり、患者の利便性が向上する。

 2007年5月現在、ドネペジルは、軽度および中等度のアルツハイマー型認知症の適応で米国や英国など90カ国で承認されている。また、高度アルツハイマー型認知症については、2006年10月に追加承認された米国に続き、インド、フィリピン、ニュージーランド、カナダ、オーストラリア、タイでも承認されている。

 日本では、軽症から高度のアルツハイマー型痴呆症患者は、125万人ほどと推定されている(うち、高度アルツハイマー型痴呆症患者は約30万人)。今回の適応拡大で、ドネペジルはアルツハイマー型痴呆症患者すべてに適応を有することになり、使用頻度はさらに多くなるものと推測される。ただし、これまでの臨床試験では44.3%の患者に副作用(臨床検査値異常を含む)が報告されているので、特に、コリンエステラーゼ阻害作用に起因するコリン作動性の副作用(消化性潰瘍、失神、徐脈、錐体外路症状など)には十分に注意したい。