2007年12月21日、片頭痛治療薬のスマトリプタンコハク酸塩の在宅自己注射用キット製剤(商品名:イミグランキット皮下注3mg)が薬価収載された。適応は「片頭痛、群発頭痛」である。

 片頭痛は、生理活性物質のセロトニン(5-HT)の過剰放出により、頭蓋内外の血管が過度に拡張することが片頭痛の主な原因であり、過剰に放出された5-HTにより血管透過性が亢進し、血管壁に浮腫・炎症が生じることで痛みが発生すると考えられている。また受容体レベルでは、セロトニン受容体(5-HT受容体)のうち、脳動脈に多く分布するセロトニン1B受容体および1D受容体(5-HT1B/1D受容体)が関連していることが解明されてきている。

 片頭痛の治療薬としては、従来からエルゴタミン製剤(商品名:カフェルゴットなど)やカルシウム拮抗薬のロメリジン(商品名:ミグシス、テラナス)などが使用されてきたが、日本では2000年に入ってから、5-HT1B/1D受容体作動薬であるトリプタン系薬剤が登場し、片頭痛治療の中心的薬剤として位置付けられるようになった。トリプタン系薬剤は、現在までにスマトリプタン、ゾルミトリプタン(商品名:ゾーミッグ)、エレトリプタン(商品名:レルパックス)、リザトリプタン(商品名:マクサルト)の4種類が発売されている。

 トリプタン系薬剤では、これまでに様々な剤型が開発されている。スマトリプタンでいえば、注射製剤(皮下専用注射剤、2000年4月発売)、内服製剤(錠剤、2001年8月発売)、外用製剤(点鼻液、2003年6月発売)があり、ほかのトリプタン系薬剤では、水なしで服用できる口腔内崩壊錠も発売されている。しかし、群発頭痛や重症片頭痛の患者の中には、注射剤だけしか有効でなく、皮下注射を受けるために医療機関に救急搬送されるケースも少なくなかったという。そうしたことから日本頭痛学会や日本神経学会は、欧米では既に使用され、有用性も証明されている在宅自己注射用製剤の早期承認が要望されていた。

 今回、承認されたスマトリプタンの注射キット製剤は、シリンジ内に1回分の薬液が充填されたキット製剤であり、患者自身が自宅で自己注射できることを可能にした初の製剤である(従来の注射製剤は自己注射不可)。なお、12月12日の中央社会保険医療協議会総会では、在宅自己注射指導管理料の対象薬剤として「片頭痛治療薬」が追記されることが承認されており、近く告示される見込みである。

 スマトリプタンの注射キット製剤は、重症の頭痛発作に耐えて医療機関を受診していた患者にとって、QOL向上に大いに貢献できる薬剤といえる。なお、処方に当たっては、自己注射製剤であることから、事前に教育入院や外来で十分に指導を行うとともに、患者が自宅で薬剤を適正に使用できることを確認しておく必要があるだろう。