2007年10月19日、沈降新型インフルエンザワクチンH5N1株)が製造承認を取得した。適応は「新型インフルエンザ(H5N1)の予防」であり、接種対象者は、医療従事者、社会機能維持者(治安・ライフラインを維持する者など)である。

 2003年11月以降、タイ、ベトナム、インドネシアなどの東南アジアにおいて、通常ヒトには感染することがない鳥インフルエンザウイルスに256人が感染し、これまでに152人の死者が出ている(2006年11月1日現在)。今後、これがヒトからヒトへと感染するウイルス(新型インフルエンザウイルス)へと変異し、世界的な流行(パンデミック)が起こる可能性も否定できない。

 そうした考えから、世界保健機関(WHO)を中心に、世界各国でインフルエンザのパンデミック対策が実施されている。日本では「新型インフルエンザ対策行動計画」(2005年11月策定)に基づき、新型インフルンザ発生の初期対応策として、医療従事者や社会機能維持者などを対象に緊急的なワクチン接種が行われることとなっている。

 今回、承認された新型インフルエンザワクチンは、鳥−ヒト感染の患者、および鳥から分離されたウイルス(H5N1亜型)を用いて製造した「プレパンデミックワクチン」である。厳密な意味での新型インフルエンザワクチン(パンデミックワクチン)は、実際にパンデミックが起こり病原ウイルスが特定されてからでないと製造できない。しかも、その製造には少なくとも6カ月が必要となる。そこで、パンデミックが起きてからパンデミックワクチンが供給されるまでの間や、パンデミックワクチンの製造量が十分量に達するまでの間に、基礎的な免疫をつけるために使用するのが、「プレパンデミックワクチン」である。

 今回のワクチンは、高い免疫原性が期待できる不活化全粒子型抗原と、アルミニウムアジュバント(免疫増強薬の一種で、ワクチン製造に幅広く実用化されているアジュバント)を組み合わせたH5N1型インフルエンザワクチンである。2006年6月には、オーファンドラッグに指定されており、開発費用の一部を国が負担したり、治験相談や申請後の審査が優先されるなど、国家レベルの支援を受けて今回の承認となった。

 なお、本ワクチンでは、第2相および第3相試験で皮下および筋肉内接種での安全性が確認されており、副反応の大部分が注射部位に発現する局所反応(紅斑・発赤、腫脹、疼痛、熱感など)で、忍容性には大きな問題はなかったことが報告されている。