2007年10月19日、抗悪性腫瘍薬のエルロチニブ塩酸塩(商品名:タルセバ錠)が製造承認を取得した。薬価収載後に発売される見込みである。承認された適応症は「切除不能な再発・進行性で、がん化学療法施行後に増悪した非小細胞肺癌」である。

 肺癌の罹患患者は年々増加傾向にあり、さらに全悪性腫瘍による死亡者の約18%(約5万2000人)を占め、悪性腫瘍による男性の死因の第1位となっている(2001年)。肺癌の80%以上が非小細胞肺癌であり、発見時には既に遠隔転移を来している症例も少なくない。かつて、この非小細胞肺癌の化学療法ではプラチナ製剤が主流だったが、その後、2002年からはゲフィチニブ(商品名:イレッサ錠)が使用されるようになっている。

 今回承認されたエルロチニブは、ゲフィチニブと同様に、上皮成長因子受容体(EGFR)のチロシンキナーゼを選択的に阻害する薬剤である。具体的には、EGFR細胞内チロシンキナーゼ領域のATP結合部位においてATPと競合的に拮抗し、癌細胞の増殖を抑制したり、アポトーシスを誘導することで抗腫瘍効果を発揮する。

 エルロチニブは、海外の臨床試験において、EGFRチロシンキナーゼ阻害薬としては世界で初めて、プラセボ群と比較して統計学的に有意な生存期間延長が認められたことから、その効果が期待されてきた。またエルロチニブは、ゲフィチニブと作用機序は同じだが、25mg錠、100mg錠、150mg錠の3規格が用意されており(ゲフィチニブは250mg錠の1規格)、副作用発現時に減量が可能であることも特徴の一つとなっている。

 エルロチニブは、2004年11月に米国で承認されて以降、2007年6月現在、世界83の国や地域で、先行化学療法が無効となった非小細胞肺癌などに対する中心的薬剤として使用されている。ただし、ゲフィチニブ同様、重大な副作用として、間質性肺炎をはじめ、肝炎、肝不全、肝機能障害、重度の下痢などが報告されているので、使用に際しては十分な注意や観察が必要である。

 なお、今回のエルロチニブの承認に当たって厚生労働省は、薬剤の適正使用や患者の安全確保の観点から、「リスク等の十分管理ができる施設等での使用で、発売後、一定数の症例データが集積されるまでの期間は、全症例対象の使用成績調査を実施すること」を義務付けた。また、外来患者には、薬剤の処方ごとに、医療機関への緊急連絡先が記載された「治療確認シート」が交付されることになっており、調剤薬局では処方せんとともにこのシートを提示した患者にのみ、調剤できる仕組みになっているので注意したい。

【訂正】11/6に、以下の点を訂正いたしました。
・4段落目に「国内外の臨床試験において」とありましたが、正しくは「海外の臨床試験において」でした。